第2話

 昼休憩、それはただただ長い休憩では無い。戦いだ。俺みたいなモブに友達なんて高価なものは存在しない。神崎さんには如月さんがいるが、如月さんは学食のようなのでいない。よって必然的に俺と神崎さんはいつも隣同士で食べることになる。


「……いただきます」


 今日も自作の弁当。仕方ない。作る人がいないのだから。卵焼きも様になってきた。流石に毎日は練習してないけど、3日に1回くらいで半年続けたらできるようになってた。慣れってすごい。


「川井くん、前、いい?」


 来た。今回はパターン2だ。ちなみにパターン1は机をくっつけること。どちらにしろ逃げるなんてあとが怖くて出来ない。


「い、いいけど」

「ありがとう」


 女神の微笑み……これは数々の人間を堕としてきた神崎さんの必殺技である。俺のMP(精神力)はもう底をつきそうだ。


「いただきます」


 そういうと目の前の女神は曲げわっぱのお弁当箱を開けた。パッと見で分かる。バランス重視の弁当だ。健康のためだろうか、野菜から口に運んでいる。選ばれた幸せ者のブロッコリーが血色のいいやわらかそうな唇の中に消えていく。


「……はっ」

「ん? どうかした?」

「いや、なんでもない」

「ならいいけど」


 見とれてたなんて口が裂けても言えない。言い逃れが百パーセントできないだろう。


「そういえば、川井くんさ」

「な、なに?」

「二次関数、苦手?」

「……!」


 なんでわかるんだよぉぉおおお!!!


「そ、そうだけど……なんでわかったの?」

「さっきの時間、シャーペンが一切動いてない気がしたから」


 確かにそうだ。二次関数は全くと言っていいほど分からない。てか、何が分からないか分からない。数学が全体的に分からないんだが、これは特に酷い。


「良かったら、教えてあげよっか?」

「……お願いします」


 プライドが邪魔したが、今後のために習って置いた方がいいと葛藤の末判断したので、お願いした。神崎さんは、


「おっけぇだよ。放課後時間ある?」


 快く承諾してくれた。放課後か、帰宅部で良かった。

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