復讐者の一撃

《白石冬和視点》


 私と澪は人波にさらわれて、ノアの加勢に入るのにかなり遅れた。

 私と澪がたどり着いたときには、ノアが固まっている三人組に何かの魔法を使いながら突撃していった。

 前に一度だけノアに聞いたことがあった。 一番弱い魔法は何かって魔法を習い始めてそれを聞いた。

 その時に、ノアは爆裂魔法と言っていた。 魔力をものすごく使うくせに魔力による防御をしっかりしていれば死ぬことがほとんどないと言っていた爆裂魔法を使っていた。 それを見ただけで私はあの三人を殺す気はないのだと分かった。

 でも、状況が変わったのはノアの爆裂魔法が炸裂した後だった。

 突如として現れた刀を腰に下げた黒髪ロン毛の男により、状況が一変した。


「あいつ!」


 そう言って澪は飛び出していった。 

 私は、澪の鬼のような形相を見て驚いた。 目で人を殺せそうなほどに力が入っていた。


《近藤澪視点》


 私は父と母を魔導士に殺された。 私が10歳の時に目の前で殺された。

 私が学校から家に帰ったときにそれが起こった。 

 学校から帰ると置手紙があった。 その置手紙にはすぐに帰ってくるからねと書いてあった。

 私が家に帰ったのは3時ごろだった。 そこから、家で一人待っても誰も帰ってこない。 いつもなら、私が帰ってくる頃には父も母二人とも私の帰りを待っているのにこの日はいなかった。 だから、私はその時言い表せない不安を持っていた。

 その不安もあっただろうか、私は意気込んで父と母を探しに行った。


「もう、何してんのよ」


 頬を膨らませたこの時の私を見るだけで殴りたくなる。

 一時間ほど探して人がだれ一人いない空間を見つけたとき金属がぶつかり合うガキーンという音が耳に入り音のするほうへと走り出していた。

 そして、音のもとにたどり着いたとき、今目の前に立っている男が力なく倒れている父と母の横で刀についた血を振り払っていた。

 そのまま走り去った男の後ろ姿を見送り、思い出したかのように私はフラフラと父と母のそばに寄った。 二人の胸には穴が開いていて息をしていなかった。

 それからは覚えていない、多分泣きつかれて眠ってしまったのだと思う。

 目が覚めると煙草を吸っていた先輩が起きた私の前にいた。

 あれよこれよと話されているうちに私は先輩預かりになっていた。



「やっと見つけた……」


 刀を持っている男の前に立ってそう言った。 ノアと男の間に立つようにしていた。


「何者だ?」

「お~い、澪ちゃん? なにしてるの~?」


 ノアが少しイラっと来る口調でそう言ってきた。 でも、不思議と気にならない。

 目の前の相手に集中できている。 


「あぁ、そういうことか。 まんまと嵌められたということか」


 そう忌々し気に呟いた男は刀を抜き構えた。

 それを見て私は突っ込んでいった。 ガキーン!と金属と金属がぶつかり合う音が響き渡る。 向こうは一本だけで、こっちは二本ある。 なら、速さで勝負!

 私と男のスピード勝負が始まろうとしていたところで、思いっきり首根っこを掴まれて後ろに引っ張られた。


「何すんのよ!」

「一人で突っ走りすぎ、向こうが手加減してくれててよかったね」


 ノアににっこにこの笑顔でそう言われた。

 

「手加減?」

「そ、今の澪ちゃんは冷静じゃない。 動きが大雑把で隙が多すぎ、向こうは今ので二、三回は殺せたんじゃないの?」

「そ、そんなわけない!」


 ノアの言葉についムキになってしまっていた。 私も何となくそれは感じていた。

 いつもよりも緊張してしまったからか動きが鈍いのは何となく感じていた。


「はぁ~、もしかして動きが鈍いとでも思ってるの? それは勘違い、目の前が見えてないだけ。 私と冬を頼りな」


 ノアはそう言うと私の後ろに向けて魔法を放った。 それは、簡単に切り伏せられてしまったが、今のはかなり強い魔法だと分かる。

 それを簡単に斬る相手の力量は完全に私より上だと分かった。


「それじゃあ、行こうか」

 

 いつの間にか隣に来ていた冬和が私に笑いかけると目を閉じた。

 すると、周りに転がっていた瓦礫が突如として浮かび上がった。 それが、男を襲い始めた。


「ダメだった」


 男を襲った瓦礫はすべて斬り落とされてしまった。


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