寮の部屋

 渡された紙に書かれた人物を探して一日が過ぎた。 初日には特に何もなかった。  

 あったことと言えば、ノアと澪さんがケンカしたぐらいだろうけど。

 喧嘩の原因は班決めでケンカになった。

 それ以外は成果なし、すでに住んでいた場所は売り払われていてそこにはだれも住んでいなかった。


「あ、そや。 ノアちゃんと冬和ちゃん寮に入る気はないかい?」


 放課後、再び学園長室に集まった俺たちを前に近藤さんはそう言った。 

 ここに寮があることを初めて知ったけれども、ここって後からでも寮に入ることは可能なのかと思う。


「あぁ、入れるよもちろん。 そこらへんは学園長がどうにかしてくれるさ」

「あのねぇ、できるけど、せめて誠意を見せてほしいのよね」


 そう言う学園長。 近藤さんはそれを本気で受け取ったようには見えず、適当にあしらっていた。

 正直に言えば、ノアにはこちらに来てほしいし、俺もこれを機にこちらに引っ越そうか悩んでいる。

 ただ、ここら辺の場所は家賃が高くて、こういうことがなければ引っ越そうとは思えないけれども。


「おい、ちょっと待て、私は寮に入る気はないぞ」


 そう近藤さんと学園長に割り込むように言ってきたのはノアだった。


「ん? どういうことや?」

「工房のこともあるし、私はイチローとは離れる気はない」

 

 ノアはそう嬉しいことを言ってくれた。 そう言われるとこの話に頷きかけていた頭が止まってしまう。


「なんや、そういうことかいな。 それやったら、一郎も教員用の寮を使やええやん」

「う~ん、それならいいかな~」


 教員寮があることにも驚きだけれども、それを聞いたノアがあっさり頷いたことについおいっ! と言いかけた。

 そこからは、話が入寮する流れになっていった。



《ノア視点》


 入寮当日。 近藤の考え的には、私とイチローが離れすぎていると私たちが現場に遅れることもあるかもしれないそう思ったことからだろう。

 ついでに、学校だが三日ほどたったが、なぜかトイレに行くたびに水をかけられる。 最初は、驚いたけれども、ワンパターンすぎて今ではもう驚くこともないし、濡れることもない。 濡れるたびに魔法を複数使わないといけないのがめんどくさい。

 

「こっち」


 今は、放課後。 今日はなぜか近藤から街に出て魔導士を探す必要はないと言われた。 何かしらの考えがあるのだろうけれども、私は相手の思考が読めるわけではないので知らない。

 で、今私と冬を寮に案内しているのは、澪ちゃん。 私には素っ気ないけど、冬には普通に接しているから私にはわざとだと分かる。


「ここが、私たちの部屋。 一人部屋だったのに」


 最後のほう、小さく呟いていたけどばっちり聞こえていた。 大体、イチローの部屋の1.5倍ぐらいの大きさがある。 

 部屋の一番奥には二段ベットが二つ置いてあった。 


「へえ~、ここが部屋か~」


 部屋の中央でくるくる回って部屋の中を見ていた。 それは、見ていてほっこりするものだった。


「冬和、ベットどこにする?」

「私? 私は下にしようかな」

「それなら荷物下においてね。 あと、五時ぐらいに勉強机が来るから、来た後食堂と大浴場に案内するね」


 澪ちゃんはそう言いながら左においてある二段ベットの下に荷物を置いた。

 それを見て、冬は右の二段ベットの下に荷物を置いた。

 私はとりあえず、右の二段ベットの上に荷物を置いた。


「で、どうするの?」

「知らない、勝手にすれば」

「ね、ねぇ。 二人とも仲良くしない?」


 私の言葉に適当に返してくる澪ちゃん。 それを見て、気まずそうにしている冬だった。



 この日本というものには裸の付き合いというものがあるらしい。

 それを言ったのは澪ちゃんではなく、冬だったけれども私は行かないというと、強制的に連れてこられて、そう言われた。


「で、なんで、私とこいつが入らないといけないの?」

「だって、二人とも私を介さないと二人とも話そうともしないでしょ?」

「そ、そんなことないよ」


 澪ちゃんの言葉に正論で返す冬に言葉に詰まる澪ちゃんだった。


「どうしたの? ノアさん、私の胸なんか見て」


 そう言われても私は冬の胸と私の胸を見比べる。 服を着ている段階で冬の胸は私よりも大きいことはわかっていたけれども、実際に見ると服から見ていたよりも大きい。 だいたいⅭぐらいはあるんじゃないかと思う。


「ねぇ、冬和。 あんた、胸大きくない?」

「え? これが、平均じゃないの?」

「世界中の貧乳に謝れ!」


 額にデコピンをされる冬。 私は自分の胸を触って自分の胸の大きさを比べる。

 どう考えてもA、もしくは男子と間違われても仕方がないと言われてしまいそうなほどしかない。

 自分の胸を触ることがなんだかむなしく思ってしまう。 そうだ、冬の胸をもぎ取ろう。

 そう考えがいたって、私は脱いだ服の中から杖を取り出した。


「冬、おとなしくしててね。 痛いのは最初だけだから」

「ね、ねぇ、ノアさん。 その杖を下ろそうよ。 あと、目が怖いよ、完全にイッてる人の目だよ!」


 そう言われても振り上げた拳は下がらない。

 結局の話だけれども、冬の胸を取ろうとしたけれども澪ちゃんに止められた。 

 さすがにとることはしないとのことだった。

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