異例の転入
校舎内に入ってそのまま俺たちは学長室に連れてこられた。
「失礼します」
近藤はドアをノックして中に入っていった。 それに俺たちも続いて入っていく。
学長室の奥の机に座っていたのは二十代前半と思しき若い人だった。
俺は、ここの学園長って若い人がやってるんだなぁと思っていた。
「ここの学園長の
「こら、学園長をババァ呼びとは何ですか!」
近藤がそう言ったことに驚いた。 若い人ではなく、若く見える人だったようだった。
ノアは「へぇ~」と言っていたが、学園長が何をしているかがわかったようだった。
「ほんで、君ら三人にはここに所属してもらおうと思おとんねん」
「この学校にか?」
「そ、ノアと冬和はここの学生として、一郎さんはここの職員としてやけどな」
「名前は調べた、か」
俺たちはこの男の前では名前で呼んでいないはずなのに名前を呼ばれたそのことに驚いていると、近藤は頬をかいた。
「何事も相手を知ることが大切やろ?」
「そうだな」
近藤の言葉に相槌を打ったのはノアだった。 確かに戦う前に相手の情報をより多く集めたものが勝つと聞いたことがあるが、本当にやられるとは思いもしなかった。
もう一つ気になることがある。 この学園の関係者になるということだ。
それは言葉道理のものだろうけれども、どうしても疑ってしまう。
「これは、ノアちゃん? だったかしら、その子と私たちの間に交わされた取引だからね」
そう、学園長は言った。
「ノアと学園長たちとの間に取引があった? どういうことだ?」
「文字道理よ。 君たち三人に手を出さない代わりに目の届くところにいて、というわけ」
一応筋は通っている。 学園長たちや国がノアや冬和さんのような不穏分子を放っておくわけにはいかない。 でも、なぜ、俺も入っているのかがわからない。
俺は二人と違って俺は魔力を持たないからなぜ、俺まで学園に入るのか分からない。
♦
《ノア視点》
イチローは結局、会社をクビにさせられていたため食い扶持に困るということで仕方がなく学園に入ることにしたようだった。
イチローの役職は近藤の補佐ということになっている。 あと、教員免許もなぜか家に届けられていたというよくわからないことがあった。
それからあれよこれよといううちに私たちは学園に編入する日になった。
冬は編入に関して友達とお別れしてきたと言っていた。
「似合ってるじゃん」
「ありがと」
セーラー服と呼ばれる制服を着たときにイチローにそう言われた。
イチローは変わらないスーツを着ていた。 これから、私たちは学園に編入する。
♦
また、冬と駅で待ち合わせして電車で揺られて、学園を目指す。 学園の始業が遅いためかかなりゆっくりできていた。
これから、どうなるかは知らないけれども新しい衣生活が始まるというのはドキドキわくわくする。
「これから、どんな出会いがあるかなぁ」
「冬も楽しみなの?」
「まぁ、一応はね。 前の学校の友達と別れるのは悲しいけど、それと同じぐらいどんな出会いがあるか楽しみ」
思わずクスッと笑ってしまう。 冬らしい考えだったから、冬は私の笑みに気が付かなかったみたいで、電車の窓から見える景色を楽しんでいた。
目的の駅について電車から降りて駅を出たところに会いたくなかった人がいた。
「はぁ~、やっと来ましたか」
「澪ちゃん!」
そう言ったのは冬。 私は嫌な気持ちを隠そうとせずに顔前面に出していた。
「そこまでしなくても、あなたが私を苦手に思っているのはわかっていますから」
「いや、とかじゃなくて、澪ちゃんは私を殺そうとするでしょ?」
「殺したいのは山々ですが、先輩からやめてくれと言われてますから」
淡々と事務的に告げる澪ちゃん。 これは私だけにするのであって冬には普通の受け答えをしている。
冬と話している時は素で、私と話している時は仮面をかぶって殺したい衝動を殺しているように思える。 憶測でしかないけど、私がこの少しの会話で思ったことだ。
あと、イチローにも普通に話しているところを見ると、魔導士である私だけにこの態度なのだろう。
「あぁ、そうだ。 学園では決して魔導士と言わないように。 学園にいる人たちは魔導士にいい思いをしていませんので」
「あっそ」
返事を適当にする。 澪ちゃんも私とは関わりたくないようだから、あまり関わりあわないように適当にする。
「ねぇ、どうして魔導士はダメなの?」
冬はそう聞く。 あまり聞いてはいけないことのように感じるけれどもそれを無視して聞く。 私は冬のズバズバ聞いていく性格はいいと思っている。
「もう、冬和は。 学園に通っている人の半数が魔導士に親を殺されたや実験体にされかけていたというのが多いの。 私も親を魔導士に殺されてるから……」
「ごめん……」
謝る冬に謝らなくていいよと言う澪ちゃん。 魔導士を殺されというところでさっきのこもった眼で見られた。
本当にめんどくさい。 私がやっていないことがなぜ、私に来るのか分からないけれども、今の話から今までのことに納得する。 澪ちゃんは私のことを敵としてみていたということを
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