森の中
あれから1週間ほど経ちもう一度週末を迎えた。
「どうしたの?」
「魔法を私に教えて!」
私が朝起きると下にはもう白石がいた。
これは、私が朝ご飯を食べている時に言われたことだった。
「いきなりどうしたの?」
朝でうまく頭が働いていないけど、前に言っていた弟子にならないかということだろう。
「私、強くなりたいただそれだけ」
「どうして強くなりたいの?」
そう言って何でなのかを聞いてみた。
これは興味本位のことだからどんな答えでも私の答えは変わらない。
「もう誰かに迷惑をかけたくないから」
そう言われつい笑ってしまった。 突然笑った私に最初はキョトンとしていた白石だったけれども私が自分が言ったことに笑ったのだと気づくと頬を膨らませぽかぽかと殴られる。
「ハハハ、ごめん。 でも、私は迷惑と思わないよ」
そう笑いかけて頭をなでてあげる。
「いいよ、今から君は私の弟子。 これから厳しくいくからよろしく、冬」
「え、え~っと、私の名前は
「知ってる、でも私はそっちのほうがいいからそう呼ぶ」
え~、と苦笑いされるそれでも私はこの呼び方を変える気は全くない。
だって、冬という文字が似合うから。
♦
イチローと一緒に森の中に来ていた。 ここには冬も来ている。 というか、ここで冬の魔法を覚えるためと魔法の練習をするためにここに来ている。
もちろん、私たちのことをずっと監視している人たちも来ている。
ここで、接触してくるだろうという読みでここに来た。
「それじゃあ、まず最初はこれを相手にしてみようか」
そう言って私は地面に陣を描いて魔道生命体を作り出した。
「ご、ゴーレム!?」
「あれ? 知ってるんだ」
「有名すぎるけどね」
そう言われて少し自慢したかったこのゴーレムを知っていると言われて少し気分が落ちる。
「え、でも、私、魔法使えないよ?」
「大丈夫、冬は使えるよ。 自分を信じて」
私から言えるのはそれだけ、これ以上のことを言えば逆に魔法が使えなくなるかもしれないから何も言えない。
私はあとは見守るだけ、このゴーレムには人を殺さないように設定されているから冬が死ぬことはあり得ない。
だから、私が言えることはがんばれとしか言えない。
《冬和視点》
はじめ、ノアさんが異世界人と言われたときどこか納得していた。 あんな魔法を使えるのだから、と知らない私がいた。
このことをノアさんに言うと、「クレアと精神が融合しかけてたのかもな」と言われた。
クレアというのが誰かわからないけれども、私の体なのに私の身体じゃないような感覚があったときのことだろうと思った。
それから1週間、私の目の前には有名なゴーレムが立ちふさいでいた。
私がノアさんに弟子入りして最初の修業。 これを魔法で倒せと言われても魔法をどう使えばいいのか分からない私に倒せるかわからない。
「ね、ねぇ、これどうやって倒したらいいの……」
土の腕を大きく振り上げるゴーレムそれを走ってかわす。
ギリギリかわせた私を次に襲うのは拳を地面に叩きつけたときに生じた地震が私を襲う。
その地震に足を取られて思わず転んでしまいそうになるのを必死にその場にとどまる。
「これ勝てないよね?」
そう呟かずにはいられない。 遠くのほうで腕を組んで見ているノアさんと大丈夫かとオロオロしている一郎さんが目に入った。
それを見て思わずにやける。 一郎さんが私のことを心配してくれるその事実が私の胸を熱くしてくれる。
「あれ?」
胸が熱くなると同時にその奥から何かが沸き上がってくるのを感じる。 その湧き上がってくるものを開放する。
♦
「これは」
私の周りに岩や木の枝、倒れていた大木などが浮いている。
それに少し驚くけれども、これが私の意思で動かせると本能的に理解できていた。
「これなら倒せるかも」
そう感じて私は、ゴーレムに向けて私の周りに浮いたものを一斉にぶつけた。
それを全身で受けるゴーレム。 ゴーレムに向けて放ったものたちが外れてノアさんたちを襲うがそれをすべて魔法で撃ち落としている。
それを見て私はすごいと思った。
ゴーレムは私が浮かせていたものをすべて受け切り、半壊で済ませているゴーレムにさらに追撃を加えるべくもう一度ものを浮かせようとした。
「はい、そこまで!」
そう大声で言われて浮きかけていたものが地面に落ちる。
「合格。 これから本格的に教えていこうね」
「わかりました」
これから本当の修業が始まると言われて私も緊張する。
《ノア視点》
思っていたよりも強力な魔法になっていた。 1週間前だと今よりも浮かせられるものの量は少なかっただろうけど成長が速い。
でも、まだ魔力を感じられていないようで、自分の魔力が枯渇しかけていることに気づいていないようだった。
本当の修業はこれからつけていきたいけれども、ここに集まって来ている人たちが許してくれないだろう。
「そこのお前たち、ここで何をしている」
そう声をかけられた。 ここの森の中には似合わないスーツ姿の男にそう言われた。
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