続きの始まり
まず、なぜという言葉が出てきた。 その次にどうしてという言葉が出てきた。
俺は家を教えていないはずだ。 なのに、モニター越しには冬和さんがいる。
「来たか」
そう言って玄関に向かおうとするノアを止めた。
「来たか、ってどういいうことだよ」
俺はそう言ってノアを問いただす。
冬和さんがここにいるのはノアが原因だということは明白だった。
「私が呼んだのだから当たり前だろ、ここに来るのは」
「意味が分からない」
ここ最近はほぼ一緒にいるのに、いつ冬和さんをここに呼んだのかということとなぜ、無断で冬和さんを呼んだのかという疑問が浮かんできた。
その疑問ももう来てしまっている冬和さんをいつまでも待たせるわけにはいかないため、今回は俺が折れることにした。 というか、いつも俺のほうが折れているような気がする。
「いらっしゃい」
とりあえず、部屋を片付けて冬和さんを部屋に入れた。
ノアは何か取ってくるものがあるのかロフトに上がっていった。
その間、こちらをチラチラと見てくる冬和さんにものすごくいたたまれない空気に襲われていた。
「おーし、それじゃあ始めるかー」
ロフトから降りてきた降りてきたノアの手には筒のようなものが握られていた。
「それなんだ?」
「これか? この中に魔力を計る魔道具が入ってる」
魔力を計る魔道具と聞いて俺の心の中の少年が興味を持った。
「あぁ、イチローには魔力をため込むことができないから魔力はないよ」
「は?」
そう言われて俺はついそう言ってしまった。
「魔力をため込めないってなんだよ」
「さぁ? なんでかは知らないけど、この世界の人間って魔力が使える人がいないみたいなんだよね。 まぁ、理由は大体わかるけど」
そう言われて納得はするが、そうなると疑問が残る。 冬和さんも俺と同じこの世界の人間なのに魔力を計っても意味がないのではと思ってしまう。
「あ、白石は、クレアに魔導体にされてるから魔力をため込めるんだ」
「「魔導体?」」
俺と冬和さんの声が被る。 お互いに顔を見あって笑う。
それを見てノアが咳払いをする。
「あ、あ~、魔導体っていうのは、魔力をためることのできない人間が魔力をためることができるようにする陣のこと」
「それってよくね?」
ついそう言った。 実際に魔力のない俺が魔法を使えるようになるのだからいいではないかと思う。
でも、そんなうまい話には必ず代償がついてくる。 だから、この魔法にもそれに釣り合う代償があるのだと思う。
「でも、大体の人間はこの陣と適合することなく死んでいる」
そう言われた冬和さんが息をのむ音が聞こえた。
なんで、そんなこと言うんだよっと言いそうなったが、ノアのそのあとに続く言葉を聞いてその言葉が引っ込んだ。
「白石の場合は適合して、クレアの魔力をそのまま引き継いでるっぽいけど……」
最後、言い淀んであやふやになっているけど多分大丈夫だと思う。
隣にいる冬和さんもホッとしていた。
「だから、白石の魔力を調べるの」
ドンッと筒の中から針のない注射器とメモリが書いてある袋みたいなものを出してきた。
「これが魔力を計るものなのか?」
「まぁ、この世界である素材で作ったからいつもとは形状が違うけどね」
そう言いながら、針のない注射器を冬和さんの腕に押し付けた。
「なにこれ、綺麗……」
うっとりしたように冬和さんは何も入っていない注射器の中を見ている。
何も見えていない俺には何がきれいなのかわからない。
それをノアは、袋みたいなものの中に入れていた。
その入れたものを数回振るとメモリを見るように眺めだした。
俺には何も見えないけれども冬和さんとノアの二人には見えているようで冬和さんは夢中にそのメモリを見ていた。
「あ、そっか、魔力のないイチローにはこれが見えないんだったね」
「え、こんなに綺麗なのが見えないんですか」
ノアは忘れていたかのように言うのに対して、冬和さんは無意識にバカにしているように思えた。
イラっと来るか来ないかは別の問題としてとりあえずこの二人にはこの中に入っているものが見えているみたいだった。
「で、結果はどうだったんだよ」
「数字で言うと120、駆け出しの魔導士ってところかな。 でも、まだこれが限界ってわけじゃないからこれからもっと強くなれると思う」
「参考資料がないから何も言えねぇ。 そういや、ノアはどうなのよ」
「私? 私は測定できる限界だよ」
ノアの数値が一番参考にならなかった。 というより、ノアの数値を聞くと冬和さんの数値が大したことのないように感じる。
せも、この世界だとかなりのすごいのだろうけど。
「あぁ、クレアの魔力の10分の1もないけど」
ここでノアが喜んでいた冬和さんを落とすようなことを言ってきた。
「引き継いでいると言ってもまだ、そのすべて扱えるようになってないからね」
そう言ってノアは冷蔵庫からお茶を取り出した。
話が一段落ついて俺は聞けていなかったことを聞いた。
「冬和さんはどこまでしってるの?」
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