骸骨と憑依
「この体はよくなじむ」
さっきの声よりもワントーンほど高くなっている声に少し違和感を感じたけれども今はそれを気にしている暇はない。
刺されたイチローの手当てをしないとイチローが死んでしまう。
腹部を刺されたイチローの出血量からすぐに死ぬわけではないと見た。
「その体の持ち主も死んだわけ?」
「いいや、まだ生きてると思うよ。 でも、私がこの体を完全に支配すればこの子は死んじゃうけどね」
そう言ってクレアは自分に身体強化を使っていた。
身体強化ができないのかと思っていたけど、使っていなかっただけの用だった。
「さっきは死ぬために身体強化してなかったんだね」
そう言うと微笑みを返された。 これで、あいつが何者かもある程度分かってきた。
だから、私は白石の中に入っている異物を追い出す。 先ほどの身体強化よりも強めにかけなおす。
私は魔法を一発当てるだけでいい。 私の魔力は残り、二割ほどしかないけど十分にある。 と、いうよりもとからそこまで回復していなかったから二割程度しか残っていないのだけれども。
これが、完全回復ならクレアにそこまで時間をかけることなく倒せている。
「どうしたの、めんどくさそうな顔して」
「何もないよ」
そう言って私はクレアを中心にして円を描くように走る。 目的はイチローの回収、もしも何かあったらいけないから先に回収しておく。
クレアはそれがわかっているのかイチローの前に立つようにしてくる。
『
クレアがそう言うと、周りに転がっていた骸骨たちの残骸、先ほどの『
「ッ!?」
私は驚いた。 突然、物が浮かび上がったからではなく、クレアが杖もなく魔法を使たからだ。
魔法使いは魔力を通す媒体が必要、これはどの魔法使いにも当てはまることなのだが、クレアはそれを持っていない。
それなのに、媒体なしに魔法を使っていることがおかしいのだ。 何かしらのカラクリがあるのだけれどもそれがわからない。 それが、面白い。
『シールド』
あまり魔力を使うのはいけない。 だから、私は一番魔力を使わない防御魔法を使う。
相手の魔法には押し負けることがわかっているから、即座にその場から後ろに大きく飛ぶ。
『シールド』に骨や石があたり、クレアからこちらが見えなくなる。
その隙にイチローを救い出す。 イチローを救い出せたというより、わざと見逃したという感じだ。
「どうして、見逃した?」
「私に勝てるわけないでしょ? 君」
今の言葉で私はまだ気づいていないと気が付いた。 だから、私は勝てる。
とりあえず、傷をふさぐ程度の治癒魔法をかける。 これで、死ぬことはないけれども目を覚ますのにしばらくかかる。
だから、その間に倒しきる。
「クレア、あんたって死人でしょ」
確認のために聞く。 わかっているけれども、クレアの口から答えを聞きたかった。
「えぇ、そうよ。 私は10年前にクソどもに殺された。 今の私はねぇ、復讐のためにここに立っているんだよ」
「そっか、それが聞きたかった」
私が陣を使ったところを見せていなかったから、私がイチローを助けるのと同時にあるものを置いていた。 それを置いた場所と今私がいるところは、クレアを挟んで丁度直線に並んでいる。
あとはこれを発動させるだけ。
『世界をあるべき場所に存在をあるべき形に《ア・ゾレラルクラ・ロ・レクファクス》』
発動準備を整えた陣を起動する。 それによって、クレアを中心として私の周りに小さい陣、陣を置いたところに陣、そして、それをつなぐような大きな陣がクレアを捕らえる。
「さぁ、死人はあるべき場所に帰りな」
右手中指を立ててクレアに見せつける。 そして、この陣がどういうものかわかったクレアは慌てだした。
「この陣はッ!? や、やめろッ! この魔法を使うな!」
この陣内から出ようとするが見えない壁に阻まれる。 出れないと分かると別の魔法を発動させる。
それとほぼ同時に私の魔法『世界をあるべき場所に存在をあるべき形に』が発動した。 まばゆい光に思わず目をつぶってしまう。
目を開けると白石が倒れている。 それを見て私が使った魔法が成功したことがわかってホッとする。
ホッとしたのもつかの間、魔力がごっそりとなくなったことで疲労感により脂汗が浮かぶ。
それを拭った。
「まだ、いるんでしょ」
空中にそう呼びかける。 白石からクレアの魔力は感じなくなったけれども、空中からはまだ、クレアの魔力を感じる。
『よくわかったね』
反響したような声が聞こえる。
カタカタという音とともに今までに倒した骸骨の骨がこの部屋に集まり、一か所に集まり始める。
『さぁ、君を殺して、君の体をもらおうかな』
巨大な骸骨となったクレアが私を殺すべく動き出す。
それを私は杖を構えて立ち向かう。
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