事件と襲撃
結局、ノアに服を買って家に帰宅した後、夕飯の買い出しなどを行っていると夕方を過ぎた。
今は、新しい服に身を包まれながら気分よさげに隣を歩いている。
「とりあえず、今日の買い物はこれだけでいいかな」
そうノアに言うと、ノアは何か考えるようなそぶりを見せた。
しばらく何かを考えて何か思いついたのかこちらを見てこう言ってきた。
「ご飯食べたら、少し一人で外を歩いてもいい?」
そう意外なことだった。 ノアが一人で外に出たいだなんていうとは思えなかった。 まだ、この世界のことを恐れているそんな風に思っていた。
でも、違った。 ノアは、この世界になじんでいた。
「よし、分かった。 いいぞ、でもあまり遅くならないようにな」
「それは大丈夫、そこまで遅くなるつもりはないから」
そう無表情でそう言われた。 俺が言うことは話半分に聞かれて、何か考え事をしながら俺の隣を歩いていた。
♦
《ノア視点》
今日もイチローの作ったご飯を食べた。 食べるたびに今まで、食事という行為を面倒だと思っていたことがバカのように思えてくる。
食事を終えて、私は今日買い物に来たショッピングモール近くに来ていた。
ここに来たのは、黄色いテープが張ってあったところに不穏な魔力溜まりがあったからだ。
「やっぱり、魔力が変に溜まってる。 この世界には、魔法がないと思ってたけど、魔法を使う人間がいるっていうこと?」
テープが張ってある場所を遠めに見ながら私はそう呟いた。
近づきたいけど、テープの横に立っている人が邪魔でしかない。 どうにかして、あの監視の目を搔い潜らなければならない。
「杖さえあれば魔法が使えるけど……」
ないものねだりをしながらも、杖にできそうなものを探す。
地面には何も落ちていない、少しここを離れたところに公園があったはず、そこに行けば手ごろな木の枝ぐらいは手に入ると思う。
適当な木の枝を拾って帰ってくると、立っていた人はいなくなっていた。
なんで、いなくなっているのか分からないけど、ちょうどいい。
拾ってきた木の枝は、一度だけの魔法行使には耐えてくれると思うから一応のために持っておく。
「それじゃあ、お邪魔します」
テープをまたいで中に入ると吐き気を催すほどの腐臭と気持ち悪さを覚えるほどの変な魔力が漂っていた。
「こんなところじゃ、魔法なんてつかえない。 早く、調べないと」
ここを見張っていた人が帰ってくるまでに何の魔法かとここで何をしていたのかを調べないといけない。
「この魔力の流れ方、妙だね」
調べ始めてすぐだった。 この変な魔力について調べている時だった。
この魔力、魔力のない人間に無理やり魔力を流し込んで無理やり魔法を使えるようにしたみたい。 これだと、すぐに体のほうが限界を迎えて崩壊を始める。
と、いうより、もう崩壊が始まっていると思う。
「これ、イチローについてたのとは別物だね」
笑いがこみあげてくる。 イチローに手を出してきた魔法使いのほかにも仲間がいて、しかも、その両方が外道魔法使いだとは思わなかった。
「あ~あ、逃げ遅れちゃったな」
調べることに夢中になりすぎて近づいてくる人に気づかなかった。
しゃがんでいた場所から立ち上がり、後ろを振り返れば先ほどとは違う人間が立っていた。
「やっぱり、証拠を消しに来たか」
「先輩、ここは私に」
スーツ姿の男女ペアがそう言ってきた。
この狭い路地で戦うにしても、分が悪い。 無理やり魔法を使ったとしても、精々微々たる身体強化程度だろう。
ここで、一番いい選択は逃げることだろうけど、私はここの土地勘がないからうまくまける自信がない。
「仕方がないか」
そう呟くと私は二人が立っているほうに向かって走り出した。
私が走り出したことに合わせて、女のほうが腰から獲物を抜く。
『
魔力が使えない中で私が選択したのは、念のためにイチローの家で作っておいた一度っきりの魔道具を持ってきていた。 完全に逃げるための魔道具であるけど。
魔道具のいいところはこういうところで簡単に使えるということと魔法が使えない場所でも使えるということだ。
突然の光に目が見えなくなった二人の脇をすり抜け、私はイチローの家とは真反対の方向に走り出した。
「やっぱりついてくるよね」
後ろを振り返ると男が走ってついてきている。 あの一瞬の時に咄嗟に目を閉じて完全に目が見えなくなるのを防いだから回復がこんなにも早いのだと思う。
女のほうは、完全に油断していたからもろに食らっていたから、まだ回復しきっていないと思う。
「それは、少し違うで嬢ちゃん」
そう隣から声が聞こえた。 驚き、横を見ると手が迫っていた。
咄嗟に杖を介して身体強化魔法を自分の体にかけて、転がるように迫りくる手から逃げた。
「今のを避けるんかいな。 こりゃ、たまげたなぁ~」
そう言いながらも戦闘態勢を解こうとしない。 それを見て私の言葉を聞く気はないな、と思い折れた杖を投げ捨てる。
身体強化をかけたとはいえ、素手では勝てない。 そう思ってしまうほどに相手との力の差がありすぎていた。
「本来は俺が相手するわけじゃないんやけどな」
そう言いながらもこちらの出方をうかがってくる相手に少し戦いずらいなと思ってしまった。
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