第10話
中学校の入試のため自宅学習期間の間、チョコレートのお菓子のレシピをたくさん見た。
由奈ちゃんはチョコレートが苦手だから、クッキーを多めに入れて、なっちゃんと凛ちゃんと綾香ちゃんはチョコカップケーキとクッキーを半分半分にしようと決めた。
バレンタインにみんなで集まった時には、みんなで持ち寄ったお菓子を交換して少し食べて、トランプをしたりして遊んだ。
中学校でも友達が少しずつ増えたけど、みんな家がバラバラで遠いから友達のおうちで遊ぶのはものすごく久しぶりで、楽しかった。門限は5時だけど、5時半まで延ばしてもらった。それでも、まだ遊び足りないくらいだった。
家に帰ると、楽しかった? って聞かれたからトランプの話をしたら、
「楽しかったみたいで良かったけど、感染対策としてはトランプはダメだね」
とママに苦笑いされてしまった。
明日は、何をして遊ぼう。待ち合わせ場所はバレンタインの時と同じ公園だけど、たぶんまたなっちゃんの家に行くかな。
「実夏! クッキーできたよ。デコレーションは自分でやって」
焼いて冷ましておいたクッキーと、チョコペンを湯せんしてダイニングテーブルに置いた。実夏、手伝いもしないでずっとゲームしてたな。
「バレンタインとまた違うクッキーだ!」
「ロッククッキーって言うんだって」
「そういえば実夏、バレンタインに友達になりたいってクラスの女の子からチョコとお手紙もらったんだった」
「そうなの? じゃあ実夏、友達1人じゃないじゃない。でも、たぶん足りるよ、たくさん焼いたから。友達増えて良かったね、実夏」
「うん! ありがとう、柚子」
オーブンが鳴った。
「何が焼けたの?」
「パウンドケーキ」
「ケーキ?!」
「たぶん、実夏が思ってるケーキとは違うかな。チョコペンが固まらないうちに、先にデコレーションやっちゃお」
「うん!」
実夏がゲームの電源を切る。地上波の放送に変わったテレビで、桜の開花のニュースをやっている。
もう、桜が咲き始めるんだ。なんか、あっという間に1年生が終わってしまう。1年生として学校に行くの、あと何日なんだろう。
今年は、学校の自慢の桜が満開に咲いているのを見られるかな。楽しみだな、1年越しの桜。
1年越しの桜 ミケ ユーリ @mike_yu-ri
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