第9話

 私は自分から話しかけられないけど、栞菜かんなちゃんが話しかけてくれて、仲良くなった。


 私は人見知りなのが自分でよく分かってるから、小学校の6年間のように中高6年かけて友達ができたらいいな、と思って中学受験をした。3年間ずつじゃ、中学校も高校も楽しめないと思った。


 私立は通わせられないけど国立中学校ならいいよ、と5年生から塾に行かせてもらった。国立でもうちみたいな賃貸マンションに住んでるような層は少ないんじゃない? とママが言ってた。


 そうかもしれない。栞菜ちゃんは家にグランドピアノがあって、おばあちゃんちにはお琴まであるらしい。お金持ちっぽい。


 良かった、1年目でもう友達ができた。栞菜ちゃんが演劇部に入りたい、と言うので私も演劇部に入った。舞台に立つのは恥ずかしいけど、照明に興味を持った。


 あらゆる行事が、感染症対策のためになくなったり、保護者すら来校できずに生徒のみで開催された。


 運動が苦手な私はむしろ、体育大会が生徒だけなのはラッキーだった。パパもママも、平日なのに仕事を休んでまで和凪の体育大会に応援に行ってビデオを見せてくれてたもの。


 文化祭も生徒だけで、後日舞台発表を中心としたDVDが販売された。うちも買ったけど、私の出てる演劇部は恥ずかしくて飛ばした。


 なっちゃんたちの通う公立の中学校は水泳の授業がなくなったらしいのに、大那中は水泳の授業があった。実夏の小学校はリコーダーは指使いの練習だけで吹かないらしいのに、大那中はリコーダーのテストまであった。


 なのに、大那中には出ないで小学校で感染者が出て、1日だけだけど実夏が休みになった。ママもまたパートを休んだ。


 和凪の通う高校でも感染者が出て、和凪も1日休みになった。


 今年は初詣にも行かなかった。おじいちゃんおばあちゃんがお年玉を持って来てくれた。毎年行ってる塔子とうこお姉ちゃんの家にも行けなかったし、おばあちゃんちで親戚が集まることもなかったから、お年玉がおじいちゃんおばあちゃん2組からだけだった。


 年が明けてしばらくして、和凪の高校で今度は教師が感染したと休みになった。


 ママが


「先生、お正月に出掛けたんじゃないの? 和凪なんか冬休みの間家からほとんど出てないのに!」


 と不満げに言っていた。

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