第4話
電話を終えてすごい勢いでリビングに入ってきたママが大声で
「柚子! 繰り上げ合格だって! 1人辞退が出たから、柚子が合格になったって!」
と言った。
「え?」
「夕方、もう1回中学校に行くよ! 合格になったってパパと塾に電話しよ!」
ママがすごく慌ただしくて、私はなんだか呆然としていた。
「おめでとう! 柚子! あと1人が越えられなかったんだな。良かったな」
と、和凪が笑った。
あと1人?
本当に、たったあと1人に負けて、私は不合格だったの?!
そう思ったら、喜びよりもなんだか血の気が引いた感覚がした。
「柚子!
と、ママが電話を渡してきて、何を言ったらいいのか分からなくて、ただ阿川先生の言うことにはい、はい、って返事してただけだった気がする。
その日は、おじいちゃんおばあちゃんにも電話したし、たくさんおめでとうを言われた。誕生日よりも、きっとたくさん。
夕方中学校に行くと、先生におめでとうと同時に、昼間は悲しい思いをさせてしまって申し訳ない、と謝られてしまった。なんか複雑な気持ちになってしまう。
本当にそうだよ、でも、合格になって良かった、でも、どうせ遠足に行けないならスっと合格したかった。
ママは、みんなと一緒に説明会じゃ人が集まって心配だけど、個別で説明してもらえて安心だってニコニコしてた。
次の日、学校に行って合格の報告をしたら、友達も先生もすごく喜んでくれた。やっと、嬉しいって気持ちが湧いた。
その時、
「おめでとうなんだけど、柚子ちゃんと同じ中学校に行けないのはさみしいなー」
って言うと、
「土曜日とか、いっぱい遊ぼうね! 中学校は分かれても仲良くしてね」
って言ってくれて、ものすごく嬉しかった。
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