警察官ヤーブス・アーカの超個人的事件簿

夏緒

第1話 ヤーブス・アーカは見てしまった

 ヤーブスが素直にハルカに付き従って到着したのは、何故か先程までいたばかりのダイナーKだった。

「おい、なんでダイナーKなんだ。ここはさっき俺が襲われた場所じゃないか」

「そんな理由はあとで別の人が考えるわ。仕方がないのよ、なんたって書き手のババアが今子どもからもろに食らった感染性胃腸炎で絶賛吐きまくってるんだから、そんなことまで考えてる余裕はないの」

 ハルカはなにやら意味の分からない理由をまくし立てながら険しい顔でダイナーKの扉を開いた。

 時間帯からか店内は閑散としており、そこにいるのは店のマスターであるユースと、あとなんか、なんか……

 なんだろうかアレ。

 カウンター席でこちらに背を向けて座りながらキャッキャと楽しそうにユースと話に盛り上がっているのは、……、多分、多分だけど、多分あれが猫獣人。

 ふわふわした明るい色の髪の毛から、ふわふわした大きな耳が生えている。

 そして、尻のあたりからは異様にもふもふした長くて可愛らしいしっぽ。

 某有名アイドルみたいなミニスカートに何故かブーツを穿いている。

 店の扉を開けた音に反応してくるりとこっちを振り返る恐らく猫獣人。

 っていやそれどう見ても完全にコスプレですやん!!

 美少女の猫のコスプレ!!

 思ってたんと全然違う!!

 ヤーブスは動揺のあまりなんちゃって関西弁になりながら思わずツッコんだ。

 猫獣人(だと思う)は、ヤーブスが小脇に抱えていた東洋のナイフを鋭く発見し、ガタッとスツールから立ち上がった。

「ああ〜! やっと見つけました! そちらから出向いてくれるなんてどんだけ親切なんですか! それいただきますからねっ!!」

 と、なんとも可愛らしい声でヤーブスに人差し指をビシッと向ける美少女猫獣人。

 耳がピクピク動いている。

 どういう原理だ。

 ヤーブスが可愛い猫耳に釘付けになっている間に、猫獣人(多分)は、向けていた人差し指に加えて親指を立て、指鉄砲の構えになった。

「危ない!!」

 それは一瞬のことだった。

 ハルカが叫んでヤーブスを突き飛ばす。

「行きますよおお〜! えいっ!!」

 猫獣人が「えいっ」と言うと同時に、指鉄砲の人差し指からきらきら輝く光線が出てきた。

 ふたりの間をすり抜けたそのきらきら光線は、開け放しだったダイナーKの扉をもすり抜ける。

 ドゴオンと派手な音が向こう側で響いて、ヤーブスが慌てて外を振り返ると、ダイナーKの真向かいの建物が大破していた。

「嘘だろ!!」

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警察官ヤーブス・アーカの超個人的事件簿 夏緒 @yamada8833

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