第44話 また魔物に襲われている子
「本当にごめんなさい! ロアさんに汚いものをお見せしてしまって、それから処理までしてもらい……うわあぁ! ごめんなさい!」
ソニアの嘔吐物の処理をし終わると、ソニアは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにして、何度も俺に謝罪していた。
「俺の方こそ悪かったって。ソニアの前であんな料理を食べたのは良くなかったんだし」
「いえ、ロアさんは食べたいものを食べただけです。私に遠慮なんかする必要はないんです。今回のことは本当に一方的に私が悪いです……。そ、それから助けていただきありがとうございます……!」
「気にするなよ。これぐらいなんともない。……まぁソニアは女の子だからああいう姿を見られたくないって思うのかもしれないな」
「……はい、その通りです」
「大丈夫だ。男である俺は何も気にしない。そこらへんは男と女で考え方が違うからな」
「そんなこと言っても恥ずかしいものは恥ずかしいです……。ロアさん、忘れてください……」
「無茶言うな。……まぁほら、俺ってあんまり細かいことは気にしない性格だろ? だから本当にソニアの嘔吐物を見ても何も思わなかったよ」
「……はい、そうですよね。ロアさん、お気遣いありがとうございます」
「全然気遣いなんてしてないぞ。思った事を言っただけだ」
「ふふっ、ロアさんらしいですね」
そう言って、ソニアはいつものように笑うのだった。
よかった。
なんとか気持ちを切り替えてくれたようだ。
その後、俺はソニアに今後の予定を伝えた。
まず《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を取得してモンスターハウスでレベル上げて、とっととダンジョンボスを倒そうって話だ。
その際にエクストラボスが出てくると、とても厄介なので情報収集は必須だな。
前回のような条件を偶然満たしてしまうのを避けたい。
まぁ、そもそもこのダンジョンにエクストラボスが出現するのかも分からないが。
◇
翌日、冒険者ギルドで朝食がてら俺はエクストラボスについての情報を集めた。
アルムントのダンジョンでもエクストラボスが出現することは確認されているみたいだった。
ランクはBらしいが、実力はAランク寄りらしい。
条件は『1分以内にダンジョンボスを討伐すること』らしい。
これはあらかじめ情報を集めて正解だったな。
準備万端な状態で戦いに臨むと余裕で1分以内に倒してしまうところだった。
朝食を済ませてからダンジョンに向かった。
ちょちょいのちょいっと魔物を倒して310レベルになった俺は《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を取得した。
『【魔法創造】の効果により 《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を創造しました』
《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を取得したものの使う機会はモンスターハウスに遭遇したときぐらいだろう。
じゃあなんで取得したの? と思われるかもしれないが、多くの魔物に囲まれた場合、普通ならば転移石を使うなりして、その場から逃げる必要がある。
しかし、《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を取得していれば、そんな状況は危険だが同時に大量の経験値を獲得できるチャンスにもなるのだ。
それに、経験値の効率を考えれば、できるだけ早くに魔法を取得することが良い。
あと俺の興味を持ったということを加味して、《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を取得したってわけだ。
「はぁ、どこかでモンスターに襲われて困っている奴とかいねえかなぁ」
そんな場面に出くわせば《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を使う絶好の機会になりそうだ。
「ははは……そんな都合よくいるわけありませんよ。それに困っている人がいないに越した事はありませんから」
「でも困っている奴を助けたら恩が売れて、お礼をくれたりするぞ?」
「め、めちゃくちゃ打算的ですね」
「ああ。エリックを助けて俺は思ったんだ。人を助けると、得をすることがあるってな」
「そんなドヤ顔で最低なことを言わないでください」
「助けてもらった方も嬉しいし、助けた方も嬉しくなる。まさにWin-Winだろ?」
「でも必ずお礼をもらえるとは限りませんよ」
「それならそれでいいさ。無理にもらおうとするのは良くない。チラッとくれないかな〜って雰囲気は出すけど」
「ロ、ロアさんらしい……。まぁそんなこと言ってもロアさんは困っている人を見捨てられないでしょうから、そういう一面があってもいいかもしれません」
「ふっ、何を言っているのやら。俺は一度、ソニアを見捨てようとしたことは話しただろう」
「それでもロアさんは助けてくれましたよ?」
「確かに! やっぱり俺って優しいな!」
「……もしかして、ちょっと恥ずかしくなったりしました?」
「そんなことはない」
「ふふっ、そうですか」
ソニアは満足したような表情をするが、別に俺は恥ずかしくなんかなったりしてないんだからね。
「──助けてくださあああああああああぁぁぁぁぁぁいっ!」
ダンジョンの中で悲鳴が響き渡ってきた。
「悲鳴だな」
「悲鳴ですね」
「いくつもの足音がこっちに向かってきている感じがするな。ちょっと高所にいって状況を把握してみるか」
「分かりました」
逃げていることを考えると、これは少し急いだ方がいいだろう。
「ソニア、ちょっとごめんな──《身体強化》」
「へ? ──って、ええっ!?」
俺は《身体強化》を使用して、ソニアを横向きに下側から肩と膝を抱きかかえたまま、ダンジョン内で高所になっているところへ向く。
現在10レベルだが、称号や装備の関係で《身体強化》を使用した状態ならば俺の方が移動は速い。
ぴょん、ぴょん、とジャンプをして、高台に到着。
ソニアを地面におろして、襲われている人物を視認する。
「……あれ、マーシャじゃないか?」
「……ほんとですね。どうしてダンジョン内で魔物に襲われているのでしょう」
悲鳴をあげていたのは以前、グリズリーに襲われていたところを助けた行商人のマーシャだった。
……お前、いつも魔物に襲われてるな。
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