第43話 食への興味
宿屋に荷物を置き、公衆浴場に行ってきた。
湯につかるのはなかなか気持ちがいいな。
浴場の中で話しかけてきたドワーフ達も不思議と憎めない奴らだったな。
番台に出ると、ソニアが近くの椅子に座って待っていた。
どうやら俺の方が長く浴場にいたらしい。
「初のお風呂はどうでしたか?」
「気持ちのいい湯だった。いい感じに汗も流せてサッパリだ」
「私もとても気持ちよかったです。疲れが取れましたね」
「そりゃ何よりだ。じゃ、飯でも食うか」
「ですね」
そして俺たちは冒険者ギルドに向かい、食事を済ませた。
冒険者ギルドの食事のメニューはルンベルクのものより質素なものが多かった。
提供できる食事は地域によるのかもしれない。
もしくはギルドの運営方針とかも関係してそうだ。
まぁうまいものを食うに越したことはないが、別に食えればなんでも良いという思いもある。
「ふむ、火山イモムシのソテーか」
俺は食事のメニューを見て呟いた。
「えっ、なんですかそれ。……もしかして虫を料理しているんですか?」
「みたいだな。なかなかに面白そうだ。注文してみよう」
「や、やめた方がいいですよ」
「ソニアは虫が苦手か?」
「はい。大嫌いです」
「断言してきたな」
「だって気持ち悪いじゃないですか。それに虫にはちょっとしたトラウマがあるんです」
「なるほど、まぁ俺は特に気にしないから頼んでみるか」
「……本当に言ってるんですか?」
「もちろんだ」
というわけで俺は火山イモムシのソテーを注文した。
そして実際に料理が運ばれてくる。
見た目はなかなかグロテスクだな。
イモムシの色は赤色でそれぞれ大きさが違う。
遠くから見ると、唐辛子に見えなくもない。
でも近くで見ると、ちゃんと虫だと分かる。
だが思っていた以上に香りは良くて、食欲をそそるものがあるな。
「う、うわぁ……」
「苦手なら見ない方がいいんじゃないか?」
「い、いや、実際に目の当たりにすると怖いもの見たさというか……分かりませんか? この気持ち」
「まぁなんとなく」
「よかったです。でも、もう見ません。これ以上見ていたら料理が喉を通らなくなりそうなので」
「それがいい」
じゃあ俺も実食といこう。
小さいやつから食べてみるか。
一匹をフォークで刺して、口に運ぶ。
カリっとした食感から噛むとぶちゅっと中の液体が口の中に広がる。
若干えぐみはあるが、案外悪くない。
というよりうまいな。
大きいやつは小さいやつに比べて、外側のカリッと感が少なくてちょっと柔らかくて、味もよりクリーミーだった。
「興味深い味だな。結構うまい」
「それはよかったですね」
「ソニアも一匹食ってみるか? 案外いけるぜ」
「絶対にいりません!」
「そうか。ま、気が向いたら一匹食ってみろよ」
「そんな事は万が一にもありません!」
◇
食事を済ませて、宿屋に戻ってきた俺とソニア。
ソニアはなんだか気分が悪そうだ。
バタン、とベッドに横になった。
悪いことしちゃったかもな。
もうあの料理はソニアの前で食べるのはやめておいた方が良さそうだ。
俺はもう一つのベッドに座り、【魔法創造】で次に取得する魔法を探すことにした。
アルムントのダンジョンのボスはBランクの強敵だ。
海賊ウィリアム・キッドの亡霊のときのように危ない橋を渡りたくない。
Bランクでも倒せるような強力な魔法を取得してから戦いに臨みたいところだ。
150レベルの次は大体500レベルの魔法だ。
その中で珍しく300レベルで取得出来る魔法があった。
どうやらこれは範囲攻撃の水魔法みたいだ。
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《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》
消費MP:900
基本ダメージ:14000
属性:水
詠唱時間:4秒
クールタイム:60秒
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クールタイムが長いため、連続した使用は出来ない。
だけど、詠唱時間はとても短くてめちゃくちゃ使いやすそうだ。
それに、《稲妻雷轟》と組み合わせれば《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》で倒し切れなかった敵を一掃するという手段もある。
ただ、消費MPが高い。
900と、結構持っていかれる。
そろそろMPの低いことが問題になってきたな。
まぁ自分よりレベルの高い相手と戦っているため、戦闘終了後に回復しないことは滅多にないだろう。
問題は無事に戦闘を終えられるかってところか。
ソニアに頑張ってもらえばMPは回復できることは海賊ウィリアム・キッドの亡霊との戦いで実証済みではあるが、今後それ以上に強い敵が出てきたとき、果たしてどうなるのか。
その点が少し心配だ。
そこらへんは後々、解決策を探していくとしよう。
今は《泡沫水鞠(うたかたみずまり)》を覚えて、アルムントのモンスターハウスでぶっ放して一気にレベルアップが目標だ。
そして500レベルを消費してアルムントのボスを倒すのだ。
ダンジョンはまだまだ沢山ある。
こんなところで足踏みしてはいられないさ。
陸竜も手に入れたんだから、多くのダンジョンを訪れ、称号を手に入れて、俺の低いステータスを少しでも補うべきだろう。
「ソニア、アルムントのダンジョンはとっとと攻略するぜ」
「……すみません、今気持ち悪くてそれどころじゃないです。うっ、吐きそう」
「マジ?」
「はい……」
「我慢できるか?」
「すみません、ダメそうです……」
「も、もう少しだけ頑張れ! 今、なんとかするから!」
……そうだ!
こういうときこそ【アイテム作成】だ!
俺は1レベルを消費して、[木製の手桶]を作成した。
「よし、準備OKだ! 発射しろ!」
「……オロロロロロロ」
ふぅ、なんとか間に合った。
やっぱり【アイテム作成】は便利なスキルだな!
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