第3話
その日、歴史が動いた。
正確には、世界が変革したというほうが正しい。
ヘッドギア一つでゲームの世界に入り込む技術は、軍事的か政治的か、本当の理由はなんなのかわからないが、利用価値というのはとても高いらしい。
発売当初から国内外問はずハッキングの対象になっていた。
ゲーム発売初日以降、セキュリティ会社の脅威情報によれば、それ以前と段違いに不正アクセスによるセキュリティソフトによる脅威の排除の稼働率が増えた。
主に韓国といったITに強い国々からのアクセス数が多いらしい。
ついでに言うとアメリカは、情報の開示請求、もしくは、特許出願をするように日本に促したのだが、国から強制的に命令できる法律は存在しない。
しかも、その要請書がネットに原文のまま流れ出た。
非難を受けるのは当然。
そして、機密文書の流出防止を出来なかったことで日本の信用も下がった。
誰が言ったのか分からないが、ゲームの外からの盗めないならゲームの中から盗めばいい。
つまりは、ソフトはほかの会社の製品でも、使用しているサーバーはレンタル、そこからたどれないか、ということらしい。
方法としては、自己のアバターデータを改ざんして、他者より優位に立つのちらほらといて、アカウント凍結したことが運営からアナウンスされる。それと同じで、必要な道具をデータ上につくり、ゲーム内のアバターに適用、ゲームに入ってアイテムを展開、作業開始、凍結前までに作業終了、というものだったらしい。
詳しくは知らないが、質量、比重は、所詮、数字でしかない。やろうと思えば0と1で表すことだって可能というこのようだ。
結果、新作のソフト、ゲームとして今後修正が随時見込まれそうなものに目をつけ、国単位で協力して特別チームを組んで実施したそうだ。
時間と材料さえあればいずれは技術が追いつき競争に参加することができる、というものではない。
等しくマイナススタートで、再現性が見当たらない。
個人でも国でも、再現不可能な未知の技術を取得する、という共通の目的により、普段は敵対国、うわべだけの友好国は、共同作業員になるようだ。
ただ一つの技術のために世界が一つになって、実際は、所謂、先進国の中でITが強いうえに、ハッキングする能力が高い、新しい技術でマウントを取りたい国や、日本の企業がそういった技術の独占を許せない国だけの集まりなのだけれど、本当に実行している。
こういう時は一致団結するようだ。
逆に言えば、そういう時でしか一致団結しない。
次に力を合わせるのは、地球外生命体が攻めてきたなどになるのかもしれない。そして、プロペラ付きの小型飛空ユニットをって、違うか。
そんなこんなで、データ化されたハッキングに必要な道具一式を不正に介入させ、サーバーに内側からのアクセスを成功させ、最後のボタンを押した時、全てが停止した、かのように思えた。
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