第42話 見合い話
涼太が私の部屋から出て行って
しばらくしたら
私のスマホに栞からの着信がなくなった
おそらく
涼太が栞に何らかの状況の説明をして
栞は納得したのだろう
寂しくもある
けど
受け入れるべき状況だった
だって
これは私がそう望んだことで
誰がそうしろと言ったわけではない
私は
しっかり次の自分と歩んでいこう
遅すぎる出発だ
しばらくして思う
パパやママは何も聞かなかった
あの夜
涼太がどういう説明をしたのかは知らないけど
あの状況はただならぬものだった
どう思ってるのかな?
また、心配かけてしまったね
私の世界は日常へ戻る
何が日常なのかは分からないけど
栞のいない世界は
セピア色の生ぬるい空気の中を
日々編んでいくようだった
ある日の事
パパが私を神妙な顔で呼んだ
ママも私と一緒にリビングに来て
パパの横に並んで座る
何なの?この感じは?
「悠、これは埼玉のおばさんが送ってくれたんだけど」パパ
パパが大きな封筒の中身を大切そうに出す
写真館の台紙?
私はそれを受け取る
「悠ちゃんにどうかしらって?」ママ
それは
絵にかいたような見合い写真だった
昔ながらの
写真館でとったであろう写真の横には
カタガキが便せんにぎっしりと書かれていた
何時代なのよ?
こんなの昔のドラマでしか見たことないよ
真面目に心配しながら真剣な表情でこちらを見る両親に
少し笑えた
きっと
きっと
埼玉のおばさんだけでなく
色々なところで聞いてくれたんだろうね
だって
私はもう30をっ過ぎているから
見合いをするには
落ち着きすぎて適齢期はとっくに過ぎている
それで
やっとこの話を掴んで
だけど私のプライドなんかを気にしてくれて
こんな風に
自然にこの話が来たように
二人は演技してくれているんだろうね
それを二人の何とも言えない表情から
手に取るよに分かってしまうから
断れないよ
簡単には・・・
「お見合い?
そっかそっか
一回してみたかったんだ~
部屋で見ていい?
ちゃんと見たいから」悠
私は声のトーンを上げた
二人はそれで
少しだけホッとしているようで
それだけで
それが見えただけで
親孝行になったような
そんな気分になれて
私は嬉しく思えた
部屋に戻って
私は見合い写真を読む
写真は全身が写ったもの一枚
とアップで上半身が写ったもの一枚
中肉中背
清潔感はあって
スーツもよく似合っている
名前は
中山 貴文(なかやま たかふみ)
年齢38歳
埼玉県・・・在住
3歳年上の姉
2歳年下の妹
二人とも既に結婚していて
地元にはおらず
長男のため実家暮らし
両親健在
仕事は・・・関東で20代のうちは会社員をしていたが
30を迎えるころ
地元に戻り
現在は町役場で働いている
結婚歴なし
もちろん
子供もなし
まだまだ詳しく書いてある
白い紙には余白がないくらいに
男性の文字
少しへたくそ
急いで書いたのかな?
何度か修正ペンを使ったのが分かる
きっと本人の字なのだろう
それを思うと
この見合いに対して
誠実な人なのだろうと想像する
どうして今まで一人だったかは分からないけど
きっと両親や姉妹から独り身であることを心配されて
30代後半にもなると
遊びなれていない人でない限り
若い頃のようにはナカナカ新しい出会いも無くて
結婚したくないわけではないけど
そういう出会いが少なくて
そしたら
近所のお世話好きおばさんからこの話が舞い込んできて
もしかしたら
最初は
普通なら
馬鹿拒否ったかもしれない
普通なら
馬鹿じゃねーの?何時代だよ!!
何て言って蹴っちゃう話だけど
みんなの顔見てたら
自分の状況を考えたら
最後に一回くらいやっとくかって
そうすれば
両親も姉妹たちも少しは安心してくれるのかも・・・
そんな風に思ったのかもしれない
私と同じように
私はこの見合いを受ける
この人に会おうと思う
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