第41話 納得

涼太は私に聞く

なぜ、栞と別れようって思っているのか?

私は弟に言うべきか

考える


そもそも

涼太はなぜそんなことが聞きたいのだろうか?

私たちの交際を猛反対していたのだから

私が別れようとしているのだから

ほおっておけばよいのだろうに・・・


「・・・言いたくない」悠


涼太は呆れた顔でため息をついて

こちらを見た


「好き好んで姉の恋愛ばなし聞きたいやつがいるか?

少なくても俺は吐き気がする」涼太


だったら

どうして聞くのよ・・・


「俺は俺の親友のために聞いてるんだ

ろくでもない女に引っかかった親友の事を心配して

あと

歳の割に幼すぎる姉の尻ぬぐい

恋愛偏差値底辺の姉の尻ぬぐい

ただそれだけだ!

だから言え!!」涼太


涙が出る

七歳も年下の弟にここまで言われてしまう私って・・・何?


ある意味観念する


「彼の部屋で・・・イヤリングをみつけた

ハートのイヤリング

化粧落としの後ろに置いてあった・・・」悠


私はあの日見たもの

思ったことを

恥ずかしさを横に置いて

弟に話した


涼太は、思っていたより静かに話を聞いてくれて

感情的に泣きじゃくりながら話をしている姉を

冷静に分析しているようだった


「それってさ

栞に聞いたの?」涼太


「聞こうと思った

だけど

そんなことに動揺する年上ってウザいって思われてしまうのが怖い

だって七歳も年上なんだよ

だから

何も話さないように

感情的に彼を責めたりしないように

帰ったの・・・


冷静になって

話そうって思った


ちゃんと距離を置いて考えたら


もう終わりにした方がいいって

大嫌いになるくらいなら

身を引こうって・・・


っで

今日、最後の話をしようって思って・・・

約束して

でも会えなかったから・・・

これは会わずにフェイドアウトした方がいいってことなのかなって

そう考えてたら

お風呂で寝てしまってて


疲れてたから」悠


あからさまに涼太は怒っているようで

私を睨みつける


「お前さ・・・」涼太


お前って・・・涼太

私、お姉さんよ!!

七つも上なのよ!!


「お前さ・・・しょうもねぇ!!

七歳年上とかどうでもいい!!

勝手に思い込んで

勝手に悲劇気取ってんじゃねーよ!!


栞の事すきなんだろ?

家族に背を向けてでも貫こうとしたんだろ?


何だそりゃ?


そこまでの相手

何があっても信じろよ

信じて信じて・・・それでも裏切られても好きでいろよ!!

そんくらいの覚悟もてよ!


もしかしたら

栞には栞の言い分があったかもしれねーだろ?

そこで聞いてたら

”そっか”って笑えることだったかもだろ?

何考えてんの?

何歳なの?」涼太


ケチョンケチョンだった

涙が止まってしまうくらい

涼太の言葉はストレートでぐさりと刺さった


私はいったい何を思って

何を傷ついていたのだろう


涼太の言う通り

馬鹿らしいことに思えた


だけど、私の口は

勝手に

勝手に話を始めた


「そうだね

そうかもしれないね・・・

だけどさ

気が付いちゃったんだよね

考えている間に

きっかけはさっき言ったことだったんだけど

よく考えたらさ

先は無いなって・・・


私、最近ね

人事異動で総務課に配属されてね

内勤だよ

今まで店頭で

華やかなところで働いていたのに・・・


今までは体のラインが分かるようなフィット感のある制服着てた

だからイチキロ体重増えても気になってた

8センチ以上のヒールはいてた

今は事務服とローヒール

冷え防止の靴下はいたりしている


そこで働いてたらね

それなりにやりがいもあるけど

思うこともあってね


もう若くないんだって・・・


涼太も言ってたでしょ?

栞はモテるから姉ちゃんみたいなおばさんじゃなくってもって


私もそう思って来たんだ

自信喪失


それに

もしも

もしもだよ

そういうはこびになったとしても

栞のご家族に合わせる顔は無いって言うか・・・

家のパパとママだってひいちゃうかもなって


そう思うと

色々と現実考えると

私じゃないなってね


ハートのイヤリングは実際

誰のものかは分からない

だけど

そんな可愛いものが似合うような年齢の子が

栞には似合うというか

それが自然というかね」悠


勢いだった

ずっと考えていたわけではない

だけど、心の奥にあった思いだった


涼太は若干

ビックリしていた


さっきまでとは違い

私の方を穏やかな表情で見る


そして


「そっか

それなりに考えてたんだな・・・」涼太


納得したようだ


涼太はそう言うと

それ以上は何も言わずに私の部屋から出て行った






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