第36話 ごめんね
栞からはその後
何度か電話があったけど出なかった
私は、彼より七歳も年上だし
もっと冷静にならなきゃ
メールを開くと既読がつく
来ていたことには気が付いたけど
今日は開かないでいよう
翌朝、内容を確認
”悠ちゃん
もう帰ったかな?
今日はハンバーグありがとう
美味しかったよ
体調
良くなるといいね”
文章は・・・いつもより
どこか気にかけてくれているような
だけど
私の異変の理由は分からないから
戸惑うような
そんなものに見えた
私は彼に無難な返信をした
”昨日はすぐに寝てた
直ぐに返信できなくてごめんね
体調
大丈夫だから・・・気にしないでね”
今日は一日何しよう・・・
毎日
新しい仕事の勉強もしているから
休みの日はいつもは休養をとることで一杯いっぱいなもので
こんなに空っぽな気分になる余裕はない
栞なしの連休二日目は持て余してしまうことが分かった
私は何ともつまらない人間だと痛感していた
彼に依存していたかもしれない
最初は純粋に好きで
やっと素直にそれが言える状況になれて
幸せだった
彼と一緒に居ることが大切で
何を捨ててもこの状況を守らなければいけない
もう失いたくない
そんな恋をしていた
彼は出会った時から成長した
肉体的なことだけでなく
精神的にも
子供のころから
大人っぽい面のある子だったけど・・・
少年から
青年になって
大人になって
私はそれと比べて未熟者で
彼と初めて会った高校生のころから
成長しない精神年齢で
また
単純に恋をして
傷ついて
衝動的に終わらせようとしている
ずっとこの調子
いつまで
これを続けるのだろうか?
私、何歳になったんだっけ?
そんな時
ママからの電話
「もしもし
よかった電話出た・・・今日は休み?
って言うか
生きてるの?」ママ
そう言えば
涼太の結婚式から連絡すらしていなかったな・・・
「休み
生きてるよ
どうしたの?」悠
ママは少しためらい気味に
「悠ちゃん今日ご飯食べに帰れない?」ママ
ずっと帰ってない
家族に合わす顔無くて
涼太と來未ちゃんしか知らない事だけど
やっぱり後ろめたいよ
「休みでしょ?たまにはママに娘の顔見させて!!」ママ
珍しく強引な誘いに
私は実家へ帰ることにした
夕方
パパの好きな日本酒と
ママの好きなプリンを手土産に家に帰る
家の前に立ち
玄関のドアを見ていると
なんだか涙が出そうになるのは
不安定な心境だからなのか?
それとも
年齢的に涙もろくなってきたのか?
小さくため息をついて
家に入る
「ただいま」悠
その声に
ママがキッチンから顔を出す
「悠ちゃんお帰り!!」ママ
明るい声に
やはり私は涙ぐんでしまうけど
ママに気が付かれてしまうと
心配かけてしまうので
下を向いて
髪の毛をなおすふりをして目元をふく
食卓に腰かけて
荷物を置く
「これ
二人に・・・」悠
私は、ママに手土産を渡す
ママはにっこり笑って
「ここのプリン
ママ大好き!!ありがとう」ママ
これにしてよかった
まだパパは帰っていない
ママは夕飯の支度をしながら話しをする
何でもない話し
ずっと一緒に居たみたいに・・・
私もそんなママの優しい雰囲気に包まれる
癒されている
西日がママの白髪を目立たせる
歳とったな・・・ママ
「最近どうしてたの?
社会人になって
なかなか帰ってこないよね
特にこの数年は・・・」ママ
ママも思う所があるようだけど
目の前にした見かけ大人の娘には
なかなか言葉を選んでしまうようで・・・
それはそうだと思う
だって
私は涼太のように
交際相手を連れてきたりすることは一度もなく
それどころか
そんな話だってしたこともないし
チラつかせた事すらないのだから
心配なんてとおに通り越しているに違いない
ごめんね・・・ママ
私は親不孝者なのかもしtれない
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