第37話 確信

夕食を終えて

片付けを手伝う

二人でキッチンに入るなんて

もうしばらくぶりで

ママはどことなく嬉しそうにしていた


リビングのソファーにはパパが座っていて

私が買ってきた日本酒を飲もうとしていた


「悠、一緒に飲まないか?」パパ


ママは私にグラスを手渡し


”パパと一緒に飲んであげて”


と目くばせをする


私はパパの横に座ってグラスを出す

パパはニコリと笑って

私のグラスに日本酒を注ぐ

私は注がれたグラスをテーブルに置き

パパのグラスに注ぎ返す


パパはそれを嬉しそうに受ける


グラスを”カツン”と合わせて

乾杯


グラスに小さく口をつけて

酒を含む


美味しい


しばらくすると

ママもこちらに来て座った


「これおつまみね」ママ


ママが落花生を持ってきた


「いただいたの

今が時期だって」ママ


三人で落花生の殻を破きながらまったりとした時間を過ごす


そう言えばこんな時間は初めてかも


大人になってからは

こんな風に両親と過ごすことなんてなかった


ママがパパの嬉しそうな顔を見て

次に私の顔を見る


「何?」悠


「・・・うん、ちょっとね」ママ


嬉しそうな顔

こちらも笑顔になる


「悠・・・家に戻らないか?」パパ


パパはこちらから目をそらすように言った

この年齢で実家に戻る事なんて考えてもなかった

一人暮しを始めた頃は

この年齢まで一人でいるだなんて

思いもしなかったし


そのうち誰かと交際して

ママやパパにも紹介して

涼太や來未ちゃんとも一緒に食事なんかもして

部屋を引き払って

結婚してって

そんな風に人生を進めていくものだと思っていた


それが今は宙ぶらりんな状態

どこへも行けないでフラフラとさ迷っている


これは

心配してくれる家族に背を向けてきた

私自身への罰のようで


自分よがりで

ワガママ

聞く耳も持たない

まっとうな付き合いではないから

こうなってしまう


ここで人生を改めなければ

ダメになってしまう


私は直感的にそう思った


「パパありがとう

そうしようかな…」悠


私の言葉に

パパとママは顔を見合わせて喜ぶ


私はその二人の顔を見たら

そう言えたことが間違いではなかったと確信した






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