10話
ギルドでギルド証を受け取った後ロックさんの家に戻るとミーシャさんが夕食を作っており、それを待つ間ロックさんと喋っていた。
「ハッハッハ!ヴェルトのやつに絡まれるとは不憫だったな。」
「笑い事じゃないですよロックさん。あの戦闘狂のせいで手続きに余計な時間がかかったんですから。まあそのおかげで資金の目処が立ったし9級になれましたが、自分の能力を大勢に知られてしまいましたし。」
あの戦闘狂筋肉ゴリラのせいであの場にいた冒険者の関心を良くも悪くも買ってしまった。
「気にするな。召喚士なんざ珍しいからどうせ直ぐに話は広まる。なら早いうちに一発かましといた方が舐められ難くなるから、ある意味良かったかもしれんぞ?」
「そう言うもんですかね?」
「そう言うもんだ。」
一発かますどころか、現在進行でやらかし続けているのだが…
ギルドから帰ってくる途中置いてきた奴ら(特にブギーマン)がやらかしてないか考えていると、頭の中にブギーマンがおもっくそ冒険者をミンチにしている光景が浮かんできた。
どうやら召喚士の能力で召喚獣の視界を意識すれば見れることが発覚した。
どうやらブギーマンの相手をしていた奴は大層な偽善し…ゲフンゴフン善人だったらしくかなりのヘイトをかった結果、ミンチにされたようだ。
まああの訓練台型魔道具のおかげで無傷だろうが、心に傷を負っていないか心配だ…
後のウィルオウィスプ・スプリガン・ジェヴォーダンの獣だが、問題なく対戦相手をお星様、又は犬神家にしている。
今アグレスさんと召喚獣越しに目が合ったんだがサムズアップしてきて大変満足そうだった。
「そう言えばザック君の調子はどうですか?」
カラドリオスの能力で病は治ったはずだが、カラドリオスはあくまで病を食っただけ。
病が治っても体が弱っていては衰弱死する恐れがあった。
「医者が言うには問題ないそうだ。今は寝てるがお前がギルドに行ってる間に一度目を覚ましたしな。」
顔に笑みを浮かべながら語るロックさん。相変わらずの山賊フェイスである。
「俺も感謝してるが兄貴もお前に感謝してたぜ。「有望な冒険者に先行投資をするのは領主の義務だ。何か欲しい物が有れば言ってくれ。」だとさ。なんやかんや言ってるが兄貴もザックの事は可愛がってたから礼のつもりなんだろうさ。」
「いやいやこの世界で身寄りのない俺を助けてくれた恩人の子を助けるのは当然ですよ。別に礼なんかいいですよ。」
「貰っとけ。兄貴は受けた恩は絶対に返す人だ。あの人の「言ってくれ」は「言え」だから恩を返すまで付き纏ってくるぞ。」
新手の妖怪かな?名付けるなら妖怪恩返しってとこかな。欲しい物なら一応あるが…
「じゃあ俺でも使えそうな武器が欲しいですね。」
「分かった、武器だな。それとなく伝えとくわ。」
「ご飯ができましたよ〜。」
ミーシャさんが夕食を持って来る。材料はわからないが煮物に香草焼きスープ、サラダなどが置かれていく。美味そうではあるが未だにテーブルの上に料理が増えていく。
テーブルの幅は200センチ程であり、一般的な4人家族のテーブルの幅は150〜160センチ程である事を考えるとかなりの大きさである。
そのテーブルが料理で埋め尽くされているのだ。目の前の山賊フェイスが大食漢の可能性も捨てきれないが、明らかに多すぎる。
「遠慮しないで食べてね。私なりのお礼だから。」
出された物はできるだけ食い切るのが日本人精神だが、俺は休日の食事は一食程度ですませる程度の少食である。
しかもその一食は多くてもラーメン2人前程度である。
「いえいえ!俺もロックさんに助けて貰いましたから。気にしないでください。ご飯は遠慮なく頂きます!」
今こそ見せよう大和魂!大日本帝国民の底力を見せてやる!
〜1時間後〜
「我が生涯にぃ一片の悔いなぁし…。」
「何やってんだ?」
「あらあら、いっぱい食べたわね。」
およそ十数人前あった料理を片付ける事に成功し、立ち上がり空に拳を突き上げる。
ちなみに十人前位はロックさんとミーシャさんが二人でたいらげた。俺はおよそ三人前。圧倒的実力差を見せつけられた。
ミーシャさんのあの細い体のどこにあの量が入ったと言うのか。この世界は女性でも地球のフードファイターばりに食うのだろうか?
満腹で動けない俺に対し、ロックさんは当然平気そうだが、ミーシャさんが鼻歌を歌いながら食器を洗っているのが納得できない。
「やっぱ少食だったか…。」
「何故俺が少食だとわかったんですか…」
「勘。」
「この山賊め…」
「誰が山賊だ。俺の勘はよく当たるん…ん?」
「どうしたんです?」
「ちょうどいい。ザック降りてこい、こいつがお前の病気を治した奴だ。」
階段が軋み誰かが降りてくる。まあロックさんのセリフで誰かわかっているが。
「こ、こんにちは。」
「こんにちは、お邪魔してます。体は大丈夫?」
降りてきたのはミーシャさんから引き継いだ金髪を生やした美少年だ。
「ロックさんの要素が何処にもないっすね。よかったよかった。」
「ふざけんな。何がよかっただ、目とか俺そっくりだろうが。」
「言われてみれば確かに…」
ザック君の瞳の色ははロックさんと同じ黒色をしていた。
「ザック、このシュバルツがお前を助けてくれたんだ。礼を言っとけ。」
「助けてくれてありがとう。」
ぺこりと頭を下げ笑いかけてくるザック君。
「いやいや気にしなくていいよ。元気になってよかった。」
気恥ずかしさから前世からの癖である中指の関節を鳴らす動作をする。
「っ!?」
「ロックさん?どうかしました?」
「いや、なんでもねえ。シュバルツ色々あって疲れてるだろう。2階の奥に空き部屋があるからそこを使え。今日のところはもう寝ろ。」
「わかりました。」
なにか誤魔化された様な気がするが、今日は色々あって確かに疲れた。お言葉に甘えて休ませてもらおう。
「お休みなさい。」
「おう、おやすみ。」
言われた通りに2階の奥の部屋に入る。そこには机と椅子、ベッドだけの簡素な部屋があった。初めて見る部屋のはずだが何故か懐かしさと哀しさを感じる。
理由はわからないが、あまり深く考えずベッドに横になる。
それと同時に睡魔が襲いかかってくる。
(意外と疲れてたんだな…)
俺は睡魔に抗わず身を任せた。
「…そ……せる。」
意識が沈む直前ロックさんの声が聞こえたがよく聞き取れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます