第2話 クリア後の世界
勇者は立っているのもやっとの体を何とか気合で動かし魔王の城を出ようとする。
幸いにも魔王の城にいた魔物たちは魔王が倒されたことにより消滅していたため自力で歩いて外に出ることができた。
外は強い霧に包まれていて周りがよく見えなかった。
勇者は歩き疲れて魔王の城の入口前の石階段に腰を落とし息を整える。
疲労のあまり声を出せず呼吸することで精一杯だった。
静寂の霧の中では勇者の荒い呼吸音だけが聞こえ勇者は目を閉じて今までのことを思い返した。
魔王討伐までの長い道のりの中でのことをいくつも思い出していると、遠くから微かに物音が聞こえてくると少しずつその音は大きくなりこちらに近づいてくるのがわかると勇者はふと目を開き音が聞こえる方に向け立ち上がり石階段を降りていった。
石階段を降り終えると物音がする方向の霧の先から灯りとともに馬車が姿を現して石階段の手前で停止すると馬に乗った衛兵が早々に降りてきて勇者の前で片膝をつき勇者を見上げたまま話す。
「勇者様!先ほど【イクスールの町】周辺の魔物たちが一瞬で消滅いたしましてもしかしたらと思い、急いで馬車を引いてまいりました!……それで魔王は……魔王討伐は果たされましたのでしょうか?」
衛兵はその言葉通り急いで馬車を引いてくれたのだろう。
額からすごい汗の量が滴り、そして今か今かと魔王が討伐されたのかの報告を息をのんで待っていた。
勇者は彼の期待している言葉を伝えるため干からびた喉の奥から必死に声をだす。
「あ……あぁ魔王は……魔王は無事に討伐した……今までこの世界を守り協力してくれたみんなのおかげでこの世界に……平和が戻った……本当に今までありがとう。」
何とか途切れ途切れの言葉で伝えると、その場で衛兵の目から涙が溢れだして泣き出した。
「いいえ……皆この日を信じて戦ってきただけです。勇者様の方こそそのようなお体になりながらも戦い抜いてくださいまして本当にありがとうございます、ささ貧相な馬車で無礼ではございますがイクスールの町までお連れ致し治療もしますゆえどうかお乗りくださいませ」
衛兵が荷物に肩も貸してくれて無事に馬車に乗ることができた。馬車は衛兵が言った通り窓も屋根もない座席と掛物だけだったが急いでいたのだから仕方がないむしろこの衛兵が急いできてくれなければあそこで動くこともできずにいたかもしれない。
魔王の城に続く橋を馬車に揺られながら渡っていると橋を渡る途中で橋の下から海まで海の方まで続いている水面の先から太陽の光が見えてきた。その光は一瞬にして昇っていきこの世界を覆っていた霧を晴らし、この大地に明るい光を与えてくれた。
橋から見えるその美しい光景をみて感動していると勇者の意識だんだんと遠くなっていく。
魔王との戦いの疲労とこの世界に平和が戻ったことからきた安心のせいでか気力が一気に抜けていき勇者に睡魔が襲う。
さすがの勇者も睡眠の呪文には勝てず馬車に揺られながら勇者はそのままぐっすりと眠りについていた
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