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アカツキ
第1話 終わりからの始まり
人々が平和に暮らすとある国に突如として魔王が現れた……。
その魔王は闇の力を使って魔物を生み出すことができ、次々とこの国の人間達に襲い掛かっていった。
そこで、とある預言者がこの国の王様に『異世界より勇者を召喚すれば魔王を倒すことができる』ことを伝えると王様は言われた通りこの国に勇者を召喚することにする。
そして王城に召喚された勇者は王様から『魔王を討伐してこの国に平和をもたらしてほしい』と頼まれたことから勇者は魔王を討伐することを王様に誓い、一人で魔王の城へと向かうことになったのだ。
~そして現在~
勇者はいま魔王の城の屋上で魔王との最終決戦の最中にいる。
魔王が最後の力を使い自身の姿を真の姿へと変え勇者を圧倒してくるが勇者も負けずと魔王に食らいついていく。
勇者が魔王の力にも臆せず徐々に魔王を弱らせていくことができると魔王にも多少の隙が出てくるようになる。
勇者はその隙ができた瞬間を見逃さずに渾身の一撃をくらわすと魔王はのけ反りその大きな巨体が屋上へ倒れこむと同時に魔王は本来の姿に戻った。
すると魔王の城の屋上から各地の魔物たちが消滅していくのが見えていた。
【勇者はとうとうあの魔王を討伐することを成し遂げることができこの世界の平和を取り戻せたんだ‼】
勇者は魔王を倒したと確信しており油断していたその隙に勇者にとある悲劇が起きる。
「私はただではやられん……貴様の存在も一緒に葬り去ってやるわ!」
勇者は倒れていた魔王が呪文を唱えていることに気がついておらず、魔王が放った呪文を勇者はくらってしまい黒い煙のような
黒い靄は勇者の周りを渦となって勇者に纏わりつき、さらには靄からはどこからか聞き取れはしないがいくつかの声が聞こえてくる……。
勇者は必死に抵抗しようとするにも黒い靄は離れずに勇者に絡みついて離れようとしない。
勇者が必死に抵抗を続けていると勇者を纏っていたその黒い靄は急に勇者から離れていくと宙で消滅した。
黒い靄が勇者から離れると勇者は急いで自分の体に異常がないかを確認する。
見たところ勇者の体に異変が起きているわけでもないし、とくに状態異常にかかったわけでもなさそうだった。
勇者はどうやら魔王が放った呪文は不発に終わったのだろうと思っていた。
先ほど魔王が倒れていた場所を見ても魔王はおらず塵となって消滅したのだろう。
(貴様の存在も一緒に葬り去ってやるわ!)
勇者の脳裏に魔王の言葉がよみがえる。
存在を消すとはいったいどういうことなのだろう……。
勇者が難しい顔をして考えていると突如として勇者が首に着けていた首飾りが光り輝きその首飾りから王女様の声が聞こえてくる。
「勇者様!?無事に魔王を討伐なされたのですか?」
王女様が心配そうに勇者に話しかける。
「はい!無事に魔王を討伐いたしました王女様」
王女様は勇者の声と魔王を討伐したことを聞いて安心したのかハッとため息をついた。
「王女様の方からこの首飾りを使われることはあまりなかったと思いますが何かありましたか?」
勇者がつけている首飾りは王女様をドラゴンがいる洞窟から救出したときにいただい たものであり、自分が今いる場所から王女様がいる場所までどれぐらい離れているかを王女様が知ることができるものというものであり、他にはこのように会話をすることもできる。
「えぇ、王城付近にいる魔物たちが次々に消滅していくという情報が城の兵から入ったのでもしかしたらと思いまして」
どうやら勇者が見た通り、魔王が消滅したことにより各地に点在していた魔物たちも消滅したらしい。
「勇者様がいる魔王の城にいま、馬車とともに兵を送っていますのでその者と一緒に王城までお帰りになられてください」
魔物が消滅してから自分の元まで馬車を送ってくれるのはさすがというべきかとても頼りになる。
最後に勇者は言っておくべきか悩んだが魔王が最後に放った呪文について王女様に話すことにした。
「実は王女様に聞いておきたいことがありまして……」
勇者は魔王を倒した後に自分の身に起こったことをすべて王女様に話した。
「そうですか……そのようなことが……」
勇者の話を聞いた王女様は悩ましそうに答えた。
「対象の存在を消滅させる呪文……私の知る限りですとそのような呪文が存在するのかどうかはわかりかねますが、安心してください勇者様!私からも父上に聞いてみたいと思います」
王女様が勇者のことを気にかけていろいろしてくれることにありがたく思っていた勇者だが、この瞬間に勇者はある違和感を感じていた……。
勇者が沈黙して何かを考えていると首飾りから王女様が勇者に声をかける。
「勇者様⁉……」
まただ……やはりおかしいと思うとふと勇者はあることに気が付き、王女様にある一つの質問をかけた。
「王女様……急に変な質問をするのですが私、勇者の名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
勇者がそのような質問をすると王女様の口からは恐らく勇者が思っていたことが発せられた。
「勇者様のお名前ですか?それでしたらこの地に召喚された時から勇者様でお間違いないと思われますが?」
勇者は感じていた違和感が確信へと変わった。
どうやら今の勇者の
王女様が先ほど『勇者様』と呼ばれていることに勇者は違和感を感じていた。
その訳は王女様はずっと勇者のことを
実は、ついさっき勇者はそのことに気が付き自分の名前を思い出そうといたが全く思い出すことができなかった。
つまり勇者と王女様、もしくはこの世界に存在する人々が魔王の呪文によって勇者の名前の存在を忘れてしまったということになる。
勇者は王女様との話の中で気が付いたことをそのまま首飾りを通して話をしている王女様に伝えることにした。
「勇者様の名前の存在が消えた……そういわれてみるとこの地に召喚された時から勇者様と呼ばれるのもおかしいものですよね、勇者様も自身に元々名前があったことに自覚はありますしね……」
勇者と王女の二人は深く考える。
そもそも魔王がどうしてこのようなことをしたのか、と考えれば考えるほど頭の中がこんがらがってくる。
「ひとまず私はその呪文についてお調べいたしますので勇者様は王城までの道の中にある町や村などで何か情報が得られるかもしれませんのんで聞き込みのほうをお願いします」
「分かりました、自分もなるべく早く王城のほうへと向かいますのでお待ちくださいませ」
「はい、私も勇者様のことをお待ちしておりますので無事に王城までお戻りになられてくださいませ……」
王女様のその言葉を最後に首飾りから放たれる光が消え、王女様の声は聞こえなくなった。
勇者は魔王との戦いでボロボロとなったからだを引きずるように足を動かしながら魔王の城を出ようとしていた……。
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