第19話・《爆裂の戦鎚》

僕たちは昼食を食べ終わった後、ボクの姉弟子である、シルヴァさんに会いに、工房爆裂の戦鎚へ向かう。

師匠はいち早く向かうとの事で、行くための道筋が書いてあるメモを渡して、行ってしまった。

「いやーまさか工房の最大手、《爆裂の戦鎚》を生で見れる日が来るとは…感動っす!」

タナカは目をキラキラさせながら、《爆裂の戦鎚》の魅力を語っていた。

「なんと言っても!あの火力っす!竜を消し炭にできるっす!」

『火力以外は何かあるの?』

「使いやすさ重視の物とか、まぁ後は…浪漫っすかねぇ」

そっかぁ、浪漫かぁ。

IQの低いやり取りを続けていると。

「うんうん、わかるのだ!少年!」

すると、真っ赤な燃える様なショートヘアのお姉さんが黒焦げで立っていた。

「浪漫は必要なのだ!」

「浪漫あってこそっす!」

「「わはははは!!!」」

……なんだろう、このボクの場違い感。

◆◆◆

このお姉さんは話が合うっす!。

まさか火竜砲の良さをわかってくれるとは!!

このお姉さん…ただ者ではないっすね!

黒焦げなのが気になるっすけど…。

お姉さんの着ていたであろう白衣だった物は黒焦げてしまい、黒くなっている。打が拳に突けている赤いガントレットは赤く輝いている。

このお姉さんからは火薬の匂いと、ニトロの特徴的な匂いがするっす。

『何で黒焦げてるんですか?』

「実験をしていたら爆発して、ここまで飛ばされてきたのだ」

「頑丈っすね」

火薬の匂いがするってことは、《爆風の拳》っすかね?それとも《爆裂の戦鎚》っすかね?。

「お姉さんは何…「そこの2人、少し話を良いか?」

俺とレイセそしてお姉さんが振り向くと、貴族風の服を着ていて、老けた男が何人かの冒険者を引き連れて、立っていた。

◆◆◆

…なんだこのおっさん、嫌な感じがプンプン匂う。

おっさんは口髭を撫でながら語りかけてくる。

「君たちは何で魔物を鎖で繋いでいないのかね?」

「そりゃ、従魔っすから」

「従魔でも魔物は魔物だ、そんな薄汚い蝙蝠を連れて、私の管轄に入らないで貰いたい」

薄汚い?

「マキナで従魔は鎖に繋がなくてはいけない何て、法はないのだ」

黒焦げたお姉さんが言う。

「法は関係ない、私はその蝙蝠に言っているのだ、おっと、下等な蝙蝠には言葉がわからないか」

この言葉を皮切りにレイセからは濃厚な殺意が沸きだしてくる、この殺意と怒りを感じ取ったのか、その愚か者以外は言葉を失う。

◆◆◆

ん?どうした?私の言葉がウケなかったのか?。

一匹の蝙蝠から発せられる、殺意と怒りを察知できない愚かな男は更に火に油を注ぐ。

「大体、こんな薄汚れた魔物を入れるから、この国は良くならないんだ」

「…【悪夢の囁きナイトメアウィスパー】」

そうな小さな声が聞こえたと思えば、私の護衛を任せていた冒険者が全員呻き声をあげながら倒れる。

「なっ!?」

『…馬鹿にするのも大概にしてね?』

突然目の前の蝙蝠が語りかけてくる。

『次は容赦しないよ?』

私は腰が抜け、座り込んでしまう。

そしてやっと気付く、いや気付いてしまった。

その濃厚な殺意と怒りに。

股が湿るのを感じるが、それをどうでも良いと感じる程の威圧を感じる。

『返事は?』

「はっはいぃぃぃ!!」

糞!何でこうなった!

◆◆◆

今ボクの目の前でおっさんはDOGEZAをしている。

『じゃ行きましょ、2人とも』

ボク達は悪夢でうなされる冒険者達と、DOGEZAをするおっさんを置いて、そこを離れる。

少し歩いたところでお姉さんが口を開く。

「あの魔法、凄まじいのだ、どういう効果なのだ?詠唱も無しに冒険者数人を眠らせるなんて…」

『あの魔法は、対象に悪夢を見せるという効果です、耐性が無い相手は一瞬で夢のなかです』

「凄いのだ…私の師匠と同じくらいの使い手なのだ」

「そういえば、何て名前っすか」

「申し遅れたのだ、私はシルヴァ・アルケイン、《爆裂の戦鎚》の長なのだ」

え?マジで?

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