第9話・蝙蝠と魔女と駆け出し冒険者

今師匠と僕は要塞都市トリニアに向かっています。

その途中途中で魔物が襲ってくるので壁が必要になるのがよくわかります。

僕は道中の魔物から血を吸い上げて体力の回復をしています。


「ん?、あれは…」


師匠が前を注視すると、金髪の少年冒険者が角兎ホーンラビットの大群と戦っていた。


『いっぱいいますね』


「あの量いたら相当な素材が採れるよ」


『一匹なら可愛いんですけどね、あの量はちょっと気持ち悪いくらいです』


「あの冒険者は乗り切れるかねぇ」


ん?あの冒険者こっちに少しずつ近付いてない?しかもホーンラビット引き連れてるじゃん!


「しょうがないねぇ、レイセはあの少年の怪我を直してやりな、回復魔法は使えたよねぇ」


『は、はい!』


僕が答えると師匠は群れに突っ込んでいき、冒険者の首根っこをつかみこっちに投げる、物凄い速度で飛んでくる冒険者を【念動】で受け止め、地面に寝かせる。


えーと、この程度の傷なら【治癒キュア】で良いかな。


少年が僕を怯えた目でこっちを見るなか、僕が【治癒キュア】を使うと、少年の傷がどんどん塞がる。


一方師匠は火炎魔法を使い、師匠の背後に漂う5発の火の玉が角兎ホーンラビットの身を焦がし、蹂躙していく。


「あ、え?え?」


少年は目の前の光景に唖然としている。

そして、師匠角兎ホーンラビットを1分位で全滅させた。


「いやー、終わった終わった」


『お疲れ様です』


「あ、あの!」


『大丈夫だった?』


「ヒッ、魔物が喋った!?」


『なっ!失礼な!!』


「なはは!大丈夫そうだねぇ」


「あ、ありがとうございます!」


「あの量を相手にするって、何したの?」


「薬草の採取中に角兎ホーンラビットの巣穴に足がはまっちゃって、怒らせてしまったんです」


「なるほどねぇ、初心者がよくやることだね」


「あの、そこの蝙蝠さんは?」


『僕?僕は師匠の弟子のレイセだよ』


「へ?弟子?」


「まぁ、そうなるよね、私はルナ、魔女だよ、君は?」


「え、えっと僕はレニーと言います」


「なるほど、それじゃあレニー君」


「は、はい!」


「帰還のブレスレットは持ってるかい?」


「すみません、高くて買えなかったんです」


レニー君はシュンとして、答える。


『帰還のブレスレット?』


「帰還のブレスレットってのは転移魔法の術式を組み込んだ使いきりの魔道具だよ」


なるほど、つまりはキ◯ラの翼みたいな感じか。


「あれって、確かに500ゼインくらいだった筈だかねぇ、君が見た時の値段はどうなってた?」


「僕が見た時は5000ゼインくらいでした」


「明らかに高くなってるねぇ、それはどこの店だい?」


「路地裏の露天でした」


「あー、そりゃ高くて当然だよ」


「え?どういうことですか?」


「安く仕入れて高く売るって奴が時々いるんだよ」


テンバイヤーみたいだなぁ。


「ここから、パトリアまで1日位かかりますよね?」


「だねぇ」


『あれ?師匠、今日宿に着くんですよね?1日もかかる道のりなんですか?』


「だねぇ、走って半日位だねぇ」


「あ、あの!」


「ん?なんだい?」


「一緒にパトリアまで同行してもらって良いですか?」


「ほう」


『良いですね』


「もちろん、報酬は出します!」


「いや報酬はいいよ」


「え?」


「だって、駆け出しの子からお金をとるほど私は落ちてないよ、レイセはどうだい?」


『師匠に大賛成です!』


「あ、ありがとうございます!」


こうして、僕たちはまた歩みだした。

◆◆◆ 6時間後

現在師匠と僕は車と同じくらいの速度で進んでます。

レニー君はと言うと…


「まさか、脇に抱えられるとは…」


師匠の脇に抱えられてます。


「もうすぐ着くよぉ」


「え?はやっグベ!?」


「あれほど舌を噛むから口は閉めてなさいと」


「ずびばぜん」


『痛そう…』


僕はレニー君に治癒キュアをかけてる。

あっ!なんか大きいの見える!


「見えてきたねぇ」


『おぉ、なんか大きい壁だ』


「ここら辺で一回下ろすかねぇ」


確かに女の人が少年を脇に抱えて走るのは相当異様だろうね。


「ここまで、ありがとうございます!」


「いいよいいよ、私達もここに寄りたかったからねぇ」


壁から、大体500m付近で師匠はレニー君とレニー君の鞄を地面に下ろす。


「また、会えますかね?」


「多分また会うよ」


こうして、レニー君はパトリアに向かって走っていった。


「今度お世話になるのは、かもねぇ」


『師匠何かいいました?』


「いんや、独り言さ」


『そうですか、なら僕たちも行きましょう』


「そうだねぇ」


師匠と僕は町へとのんびりむかった。

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