第6話・存在進化と赤い鎖
ああは言ったがどうすべきか、師匠が前に言っていたけど、竜種には【対魔術鱗】という五大元素の内四つを減衰させる効果のある鱗を持つらしい。
師匠は効く属性を教えてくれる前に寝落ちしちゃったけど…
何の属性が効くかは、わからない。
こちらに近くに来るまでに火属性と水属性の魔術は試してみたけど効かなかった、となると地雷風の三つのうち一つである。
まだ使えないのは風属性、師匠は倒せない敵を戦わせはしないだろう。
アークワイバーンはノーモーションタックルをボクへ仕掛けてくる。
「え?はやッ、イッ!?」
アークワイバーンの突進は思ったよりも早く、対応できず避けきれなかったボクの右足を粉々に粉砕する。
ボクはあまりの激痛に胃の中身を全て吐き出した、胃液は吸った血液で赤く染まっていた。
今のボクの右足は明らかに曲がってはいけない方向に曲がっており、足としての機能を果たしていない。
(あ、足が痛い、前世でも折れたことはあったけどこんなに痛かったっけ!?)
曲がってはいけない方向に曲がり、折れた骨が肉から突き出ている自分の足を見て恐怖を覚える。
(本当にこれ勝てるの?こんなのボクが死んで終わりじゃないの?……)
ボクの心には絶望と恐怖で染まっていた。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
ボクの思考のこれ1つになってた。
『諦めたい?』
(…誰?)
知らない声が頭の中で響く、幼い少女のような声が。
『まだ通れる道はあるのに諦めちゃうの?』
(……諦めたくない!)
『じゃあ頑張ろう』
ボクは深呼吸をする。
邪魔な折れた脚を切断魔法【
今アークワイバーンとボクは目が合っているそのアークワイバーンの目は餌を見るような目でボクを見下ろしている。
アークワイバーンは強靭な翼脚を拳の様に叩きつけ、再び攻撃を仕掛けてくる。
一撃目を右に転がり避け、二撃目を飛びあがり避ける。
三撃目を避けられないと思ったボクは、アークワイバーンの翼脚に【
「GUOOoooo!!!!」
アークワイバーンの翼脚には大きなヒビがはいり、苦しそうな声をあげる。
(雷属性が効いた!後は広範囲でアークワイバーンに効く雷属性魔術を放てば!)
ボクはすぐさまに魔術の創造する。
イメージするのは巨大な落雷、それも一撃で岩を砕くような落雷を。
そしてボクは創りあげた魔術にボクの魔力を大量に注ぎ込みアークワイバーンに放つ。
『【
赤い雷が落ち、アークワイバーンを包み込む。
その威力は辺り一帯を黒焦げにするほどである。
『なっ!?まだ生きてるの!?』
舞い上がった土煙が晴れると、アークワイバーンは片方の翼脚は完全に炭化しているが立っていた。
アークワイバーンの尻尾の突きを避け、アークワイバーンに【
先ほどの雷攻撃のおかげで鱗は効果を失っており、アークワイバーンの体を抉る。
「GUOOoooo!!!!!」
アークワイバーンが怯んだ隙に首へ噛みつく。
アークワイバーンの血は今まで飲んだどの血よりも美味しく、力が湧いて来た。
夢中で吸っていたせいか、アークワイバーンの尻尾の叩きつけを避けられずに喰らってしまう。
身体中の骨が砕けても血を吸うのを止めなかったからか、アークワイバーンの体は次第に動かなくなり、完全に動きを止めた。
『ハァ、ハァ』
息がしにくい、そんなことを考えていると師匠が転移してきた。
「よかった、生きてるようだね」
『し、しょう、ボクやり、ましたよ』
「あぁ、よくやったよ、今はとりあえずお休み、私の可愛い弟子」
その言葉を最後にボクの体は赤い鎖で覆われてボクは意識を失った。
◆◆◆
暗い時間、ルナはメモを書いていた。
「シレオ新暦2000年の中でも存在進化の例は過去を遡っても1人しかない、血の女王ブラッドクイーンただ一人、力の強い真祖の中でも神祖と呼ばれた、ただ1人の吸血鬼だった、とっここまででいいかな」
ふーむ実に興味深い、あの血の女王ブラッドクイーンのように赤い鎖が身体を覆うとはねぇ普通のヴァンプ系統は身体が徐々に変形する感じだからねぇ、まさかブラッドを通り越してインサニアまでいくとは、この成長速度は異常と言うべきかもしれない。
今私の隣にいる、黒い体毛に紅と白の毛がはえたの弟子がすやすやと寝息をたてている。ここまで早く成長するとはねぇ…やっぱり愛嬌の有る顔してるからねぇ、吸血鬼になっても美人になるだろうねぇ、そう思うとにやけが止まらない。
今からが楽しみだよ、でもねぇ身体は雌なのに中の魂は男の子なんだよなぁ、そこが心配だけど、吸血鬼まで存在進化したら髪の洗い方とか色々教えてあげないとねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます