第23話 悪霊

「もう、おにいちゃんが来たら話になりませんわ。世里奈、帰ろう!」

「えー。私義弥さんの話聞きたい」

「ほらみろまりあ! お前以外の女は皆俺に気があるんだ!」

「いや、そういうんじゃないです……」


ミラノか。

いいよなー。

海外に対するあこがれは強いほうだと思う。

知らない場所には行ってみたいし、やったことがないことには挑戦したい。

おしゃれなものも大好きだからいつかイタリアには行ってみたい。


「イタリアでどんなところに行ったのか。何を食べたのかとか知りたいです!」


そういうと義弥よしやさんはスマホの中の写真をたくさん見せながらどんなに建造物が美しかったか、食べたものがどんなにおいしかったかを教えてくれた。


「義弥さん、確か3年くらいイタリアに行ってましたよね?」


私が高校生になったくらいのときに義弥さんは大学を卒業してすぐにイタリアに行くって話を聞いた気がする。

ミラノだとは知らなかったけど……。

義弥さんが大学生になってからは実家を出てまりあとは別に住んでいたからもう7年は会ってなかったけど、こんなに人って変わるんだっていうくらい見た目も性格も変わった。


「そうだね。3年だね」

「留学ですか……?」

「まあ留学といえば留学かな」

「はあ……」

「それにしてもさ」

「はい?」

「さっきから気になってんだよね」


義弥さんが私の手をとる。


「この指輪」

「えっ、これですか?」

「うん。これのおかげでだいぶ静かだよね」


義弥さんが私の指輪をゆっくり外す。

次の瞬間、店の扉が大きく音を立てて開き、入り口から何十人もの霊が一気に店内に入ってくる。


「え、ちょっと」


店内にいた人々は意識を失ってバタバタと机に突っ伏していく。


「まりあ!?」


まりあはふっと意識を失うと、机に突っ伏してしまった。

店内を埋め尽くしていく霊。

どす黒いオーラを放ちながら、店内を滑空する。

直感的にわかる。

ここにいる霊はユキトくんとは違う。

間違いなく悪霊と呼ばれるものだ。

意識を失った店内の人々の首にまとわりついては生命エネルギーのようなものを吸い取っている。


「ダメだ。なんかしんどい――」


朦朧とする意識のなかで義弥さんが腰から剣のようなものを引き抜いたのを私は見逃さなかった。

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私の彼はエクソシスト!?~絶対に働きたくない彼×絶対に働かせたい私の泥沼うぉーず~ @Lisarisanyan

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