第22話 私だけが知らないこと
「それでさ……、なんか将太郎、私のこと小学2年生くらいの頃から好きだって……」
「だろうね」
目の前で平然とアイスコーヒーを飲むまりあ。
「え、知ってたの?」
「知ってたよ。知らなかったの世里奈だけだよ」
「嘘でしょ!?」
「だって傍から見てたら一目瞭然だったもん」
「マジか……」
開いた口が塞がらない。
すっと座席を立ってカウンターの前まで繰り出すと、ケーキを3つほど一気に注文する。
もういい。
コーヒーティラミスとストロベリータルトとクッキーシフォンケーキを食べてやる。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「お持ち帰りですか?」
「いいえ! 私が一人で、ここで食べます!」
まりあの目の前で一気にケーキ3つをやけ食いする。
「ちょっと、そんなに食べたら絶対あとで後悔するよ」
「うるさい!」
私だけ知らなかったなんて馬鹿みたいだし、今まで知らず知らずのうちに将太郎の好意を利用してしまったことがあるのかなとかモヤモヤする。
「あんまり気にしすぎないほうがいいって」
「そうそう。気にしすぎないほうがいいって」
横のテーブルから口を挟まれ、びっくりして横を見る。
「やっぱりミラノのスタハには敵わないな」
ラフなスーツスタイルの隣の男はやけにまつ毛や手足も長く、少し現実離れしたスタイルのよさでまるでモデルのようだった。
「え、誰です――」
「おにいちゃん!?」
まりあが素っ頓狂な声を上げる。
「久しぶりだなわが妹よ」
「はあ~!? 戻るならちゃんと連絡しなさいよ!」
ハンドバッグでガンガン男を叩きまくるまりあ。
「てか、お土産のグッチのバッグは?」
「ごめん。予想外に向こうでお金使っちゃって買えなかった……」
「はあ!? あれだけお願いしたのに!!」
ハンドバッグの威力はどんどんと増し、男が悲鳴をあげる。
いろんな疑問が頭のなかを駆け巡る。
え、まりあのおにいちゃんってこんな感じだっけ?
なんかどちらかというとだいぶふくよかでこぶたさんみたいな感じの人じゃなかったっけ?
すごいやさしくていい人だったけど間違ってもこんな軟派な感じの人じゃなかったような……。
「ていうか、世里奈ちゃん可愛くなったね」
「私の友達ナンパすんな!」
まりあのハンドバッグが男の顔に直撃する。
「おにいちゃん、ほんとにチャラい!! そういうの日本では通用しないから!」
「ミラノでは通用したんだよ!」
みらの……?
ただただサイセリアのミラノ風ドリアが頭に浮かぶのだった。
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