第19話 気合いを入れて飲みにいくのっていいよね
服はお気に入りのワンピースに着替えて、化粧直しをしたついでに目元にピンクの春っぽいアイシャドウを仕込んで、髪もちょっと巻いてみた。
お気に入りのピアスもつけて……。
「結構可愛くできたかな」
いつもは歩くのにしんどいからスニーカーしか履かないけど、今日は一目ぼれして買ったパンプスを靴棚から出す。
「これでオッケー!」
出かける前、ふと指輪のことを思い出す。
「つけていってみようかな……」
指輪をつけると、自然と元気が湧いてくるような気がする。
「よし!」
ここまでフル装備したらイケメンとの飲みも怖くない!
* * *
空太郎さんに呼ばれた居酒屋は駅チカ個室の居酒屋で、高すぎもせず安すぎもせずちょうどいい感じの店だった。
「空太郎さんとの飲み! いえーい!」
初っ端から飛ばして色々注文してみる。
はちみつレモンサワーを注文する私の横で普通にビールを飲んでる空太郎さんに微妙におじさんっぽさを感じる。
まあイケメンだし気にならないんですけどね。
「何をそんなに悩んでるの?」
「何をそんなに悩んでると思います?」
「質問を質問で返すな」
最近のバイトの様子やユキトくんの話をしてくれる空太郎さん。
活き活きと話をする空太郎さんを眺めながら、はちみつレモンサワーをぐびぐび飲む。
「空太郎さんはなんか最近さらにキラキラしてますね」
「キラキラしてる? 少女漫画みたいな感じ?」
キメ顔をする空太郎さんにふふっと笑いが漏れる。
口元を手で覆って笑っていると、空太郎さんにいきなり手をつかまれる。
「この指輪……」
「やっと空太郎さんに返せそう」
「あのときの女子高生って……」
「だから会ったことあるって言ったじゃないですか」
「ええ!! ほんとに気づかなかったよ!! もう何年もたってるしさ」
「何年も経ってても私は空太郎さんを忘れなかったのに!」
「ごめん……」
黙りこくる空太郎さん。
「いや俺あのときめっちゃ格好つけてた気がしてすごい恥ずかしくて生きていけない」
「頑張って生きてください」
あああああ……とか小さい声で呻く空太郎さん。
あの日の記憶自体はあるんだと少しうれしくなる。
私が一方的に思い出を覚えているだけというのは寂しいから。
「いやまあ、なんというか、その指輪はあげるよ」
「いいんですか?」
「実際御守りとしてそれなりに効くでしょ?」
「そうなんですよね」
「俺の死んだばあちゃんが霊能力者でさ、俺もどこまでほんとかはよくわかんないんだけどその指輪してるとあんまり霊が寄ってこないんだよな」
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