第18話 飲み行った後にケーキ食べられるのかい?

今日は久々に大学の授業にも出られた。

体調はだいぶ回復したのに、精神的にしんどい。


「どれにすんの?」

「うーん」


可愛いケーキ屋さんのショーケースに並ぶ綺麗なフォルムのケーキを眺めながら、頭では昨日の指輪のことばかりが浮かぶ。

私が前から行きたいと言っていたちょっとお高いケーキ屋さんのサービスデーだから一緒にケーキ屋さんに行こうと誘われ、断る理由も思いつかなくて一緒に買いにきたけど、なにが食べたいのかさっぱりわからない。


「どれも美味しそうだもんな。俺はこれにする」


マンゴーケーキを選んだ将太郎。


「私もそれにしよ」


ショーケースを見れば心が動くかと思ったけど、やっぱり今日はそこまで気分じゃないや……。

考えるのが面倒で将太郎と同じものをとりあえず買う。


「由美子と瑠夏るかの分も買お」


母の由美子も弟の瑠夏もマンゴー嫌いじゃないし、いいよね。


「じゃあね!」


将太郎と別れて家路につく。


「あー……。モヤモヤするな」


一人呟く。

桜ももう散ってしまって、一番好きな季節が終わってしまった悲しさを感じる。


「モヤモヤする!!」


空に向かって叫ぶ。


「世里奈ちゃん……?」


振り返ると、空太郎さんがチャリにまたがって立っている。


「やっぱり世里奈ちゃんだ」

「空太郎さん!」

「何にモヤモヤしてんの?」

「あー……聞こえました?」

「まああんだけ大きな声で叫べばね」


苦笑する空太郎さん。

やっぱり空太郎さんかっこいいなあ~。

こんなかっこいい人が数週間前まで無職だったなんて――。

勿体ないですわ……。


「とにかくモヤモヤしてるんですよ!」

「なにそれ、ウケる」

「笑いごとじゃないんですよ?」

「飲みに行く?」

「え、空太郎さんと!?」

「うん。奢るよ」

「2人で!?」

「嫌だったら将太郎くんとか呼んでもいいよ」

「いやいやいや、今将太郎と会いたいタイミングじゃないんで2人で行きましょ!」

「私、ちょっと今買い物してきちゃったんで1回家帰ってちょっとまた待ち合わせでいいですか?」

「いいよ。じゃ、準備できたら連絡して~」


そう言うと空太郎さんはチャリで颯爽と去っていってしまった。


「やっぱりかっこいいじゃん~」


今のやり取りでも思ったけど、空太郎さんってきっと大学時代とか普通にモテたんだろうな。

社会人になってからは無職だからあれだけど、普通に女の人をさらっとサシ飲みに誘えるってことはそういうことだろうな。


「ぼーっとしてる場合じゃない! いますぐ帰って着替えて化粧して髪も巻けたら巻きたいし……!」


空太郎さんとの関係が大きく動き始める予感がした。

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