第15話 将太郎の告白
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世里奈をしばらくソファの上に寝かせていたが、一時間経っても目を覚まさなかった。
最初は心配したけれど、すやすやとした寝息を聞いて安心した。
空太郎さんと世里奈をタクシーに乗せて、自宅まで送った。
「お前、やっぱりこれが必要なのかよ……」
ベッドの上ですやすや眠る世里奈。
世里奈が御守りとして大事にしていた指輪を自分のポケットから出す。
高校生のとき、世里奈が空太郎さんに貰った指輪。
本人はなくしたと思っているけれど、そうではない。
俺が盗んだんだ。
最低なことをしたっていうのはわかっている。
世里奈のことが好きだ。
幼馴染で誰よりも世里奈と過ごした時間は長いし、世里奈のことを誰よりもよく知っている、と自分では思う。
世里奈が名前すら知らなかった空太郎さんのことをずっと想っているもんだから、正直イライラしていた。
イライラしたし、悔しかった。
世里奈が困ったとき、できるだけフォローしようと頑張ってきた俺の努力は、一瞬の出会いによってすべてがかすんでしまった。
こんな御守りの指輪なんかなくても、俺が世里奈のことを支えられると証明したかった。
「ちゃんと返そう」
指輪がなければ空太郎さんのことは忘れるかなと思っていたのに、指輪なしでも出会ってしまった。
指輪を隠したことに意味はなかった――。
指輪をどこに返そうか、と世里奈の部屋を見回す。
机の上?
それとも部屋の片隅とか?
「ん……」
声がしたので振り返ると、世里奈が目を覚ましていた。
「大丈夫かっ?」
「あれ、私の部屋じゃん」
「お前倒れたんだぞ」
「マジかー……」
「空太郎さん曰く、ほんとに霊がうじゃうじゃらしいからしばらく行かないほうがいい」
「そんなー……。そしたら空太郎さんに会えないじゃん」
指輪を返すタイミングを完全に失ってしまった。
「じゃあ俺帰るよ」
「うん、ありがと~」
ポケットのなかの指輪の重みを感じながら帰路についた。
* * *
「俺さ、気が付いたんだけど幽霊たちの声は聞こえなくても筆談とかできるんじゃね?」
「えぇ……マジっすか」
昼下がりのカフェ『Sunny』、空太郎さんの突拍子もない提案にドン引きする。
「幽霊と筆談ってアリなんすかねえ?」
「ナシではないだろ」
「まあ……」
「今日も店内に10人いるしさ。試してみる価値あるよ」
「もう、怖いから具体的な人数とか言うのやめてくれません!?」
「そんなんで解決するなら、筆談でもなんでもしてよ~。解決したら時給アップするから~」
店長がナッツをつまみながら言う。
「やるしかねえ!」
空太郎さんが腕まくりをして、なにやら紙で作り始めた。
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