第13話 悩んでるフリすら上手くできないので、社会で生きるのに向かない

あのカフェで働くか、働かないか考え始めて早2日。


「どうするかな~~~~」

「空太郎、悩んでるフリしてるだけでなんも考えてないじゃん!」


読んでいたシャンプがユキトによって閉じられる。


「邪魔すんなよ」

「たいしてちゃんと読んでなかったでしょ。結論先の延ばしにするのやめなよ」

「そんなこと言ってもなあ~」


ハッといきなり振り返るユキト。


「空太郎! 髪整えて、いまよりマシなジャージ着て! 早く!」

「なんだよ急に」

「いいから!」


腹をポリポリ掻いていると、下から母ちゃんの呼ぶ声。


「空太郎~~、かわいいお嬢さんと男の子が来たわよ~~」

「だから言わんこっちゃない。俺はちゃんと先回りして伝えたからね」


ため息をつくユキト。


「やっべ世里奈ちゃんと将太郎くんか」


俺は急いでクタクタの高校ジャージからプーアの比較的マシなジャージに急いで着替えるのだった。


* * *


「空太郎さん、働かないんですか!?」


世里奈ちゃんが部屋に来るなり、叫ぶ。


「まあ検討中っていうか……」

「空太郎さん、そんなことしてたら世界終わっちゃいますよ」


人生ですらなく、世界が終わるとは……。

どんな時間間隔で生きてんだ、将太郎くん……。


「時給が安いからっすか?」

「まあそれもある」

「それ以外もあるんすか」

「まあ……」

「なんすか、理由教えてくださいよ」

「いや、将太郎くんには言いづらいよ」

「なんすか水臭い。怒ったりしないんで言ってみてくださいよ」

「いや、まあ……」

「気になるんでちゃんと言ってください!」

「あのカフェさ、この辺で一番霊が多いんだよ。俺のなかのナンバーワン心霊スポット」

「……ああああああああああああ!! なんで言ったんすか! 黙ってくれてりゃ知らずに済んだのに!」

「怒ったりしないって言ったじゃん」

「そういう話だと思わなかったんすよ!!」

「だからこの前、カフェから帰るとき体調悪かったのかー」

「世里奈ものんきなこと言ってんじゃねえ! 俺は今日この後バイトなんだぞ!?」

「がーんば」


世里奈ちゃんの心のこもっていない応援に傷つく将太郎くん。


「建物も別に古くないし、店内も綺麗だしなんでなんすかね?」


半泣きの将太郎くん。


「首塚があったとかかな」


世里奈ちゃんが首をかしげながら言う。


「いや、お前いきなり首塚の発想なかなかだぞ。俺そういうの嫌い!」


俺がバイトを始めるどころか、将太郎くんが辞めそうだ。

そう思った。

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