第9話 musyoku
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「それで言ったの。私たち会ったことありますよって」
「それでそれで?」
大学近くのカフェ。
向かいに座って私の話を聞くまりあはここ一週間で一番ウキウキしているように見える。
「覚えてなかった」
「そっか」
「運命の人だと思ってたのは私だけだったのかも」
「まあそういうこともあるよね」
「そういうこともある。だけど私は手にしたチャンスは逃さない!」
まりあに空太郎さんのインスタを見せつける。
「どうよ!」
「お、交換したんだ」
「まあね」
「見たい見たい」
「おっ、まりあお得意のインスタチェック入りますか!」
「空太郎さんの年齢は?」
「23って言ってたよ」
「社会人?」
「かな~? あ、でもこの前映画言ったの月曜日だったな。もしかして大学生かな」
「まあ平日休みの仕事もあるしね」
「では早速チェック入ります!」
空太郎さんのインスタを隅から隅まで眺めるまりあ。
「おぉ~単独の自撮りがない。好感度アップ! がゆえに顔がよくわからない。この写真なんかバケハ被っちゃってるし、友達との写真はふざけててよくわからないな」
「そうなんだよね~」
「それにしても最近の投稿が少ないな」
「私もそれ思った」
「まあでもコロナ禍だしこんなもんか。なんていうか何も伝わってこないインスタでしたわ」
「ウキウキで見といて酷いな」
「次会う約束とかしてないの?」
「それがメッセージ送っても見てないみたいでさー」
「ラインのがよかったんじゃないの?」
「インスタだったら写真の話題とかからいけると思ったんだけど、マジでラインのがよかったかも。学生なのか社会人かすらわからないなんてさー」
「無職だよ」
「いやいや、それはないでしょ――って誰!?」
まりあが驚いて振り向く。
「ユキトくん!?」
「ああ、例の幽霊少年? こんにちはまりあでーす」
突然現れたユキトくんに声が裏返る。
「空太郎は無職だよ」
「どういうこと?」
「空太郎働いてないもん。ほぼ一日中家にいて、俺とゲームしてる」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃないよ。同居人の俺が言うんだから」
空太郎さんが無職、無色、ムショク、むしょく、musyoku……。
「なんでムショクなの!?」
「知らない」
「世里奈の運命の王子様が無職だったとはね。いろんな意味でこの恋終わりね」
まりあの言葉に思考が停止する。
「いや、終わらせない!」
私は一つの大きな計画を思いつくのだった……。
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