第7話 Life goes on
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「ごめん。わかんないや」
そう言ったときの世里奈ちゃんの傷ついた顔が印象的だった。
世里奈ちゃんのマスクをおろした顔を頭のなかで反芻する。
年齢は4つ離れていることを考えると小学生のときの後輩とか……?
「やっぱりわかんないな……」
「どの辺がわかんなかったの?」
ユキトがエウァのパンフレットを読みながら聞いてくる。
「世里奈ちゃんとどこで会ったことがあるかわかんないんだ」
「なんだそんなことか」
「てかユキトは家帰れよ!」
「帰る場所なんかないもん」
「お前なんかキャラ変してない?」
「なんかシン・エウァを見たら吹っ切れたんだよ。色々」
「わかったから宙に浮くのだけはやめろ」
「空太郎、ごはんよ~!」
下から母ちゃんが呼ぶ。
「母ちゃんにはバレないように静かにしてろよ」
「はーい」
こうして俺とユキトの奇妙な共同生活が始まってしまった。
俺とユキトは趣味があった。
ゲームを一緒にしたり、映画を見たり、漫画を読んだり。
ユキトには内緒だが、あまり友人がいない俺にとってユキトと過ごす時間はとても楽しいものだった。
ユキトと遊ぶのが楽しすぎていくつかゲームソフトを新たに買ったりもした。
「ねえねえ空太郎、夏になったら一緒にシン・ウルトラマソ見に行こうよ」
「お~いいね」
「もちろん空太郎のおごりね」
「おん」
「ところでさ、空太郎って無職なの?」
俺は何も言い返すことができなかった。
皆さんは無職にどういったイメージを持っているだろうか?
いや、正確に言うとどんな人間が無職になりやすいと考えるだろうか?
人が無職になる原因はいろいろだ。
心身の病気にかかってしまったとか、上司のパワハラやセクハラで仕事を辞めざるをえなかった人もいるだろう。
また、コミュニケーション能力やら学歴を問われる就職試験を乗り越えることができなかったものもいるだろう。
俺はそのどれでもない。
働くということに納得がいかない。
それだけだった。
なんとなく高校を卒業して、なんとなく大学に入学し、なんとなく卒業してしまった。
人並みに就活なんかもしたけど、働くということ自体にピンとこなくて結局就職戦線から離脱してしまった。
「しょーもねえよなー」
何になりたいとかそういうんじゃない。
何もしたくないんだ。
何もする気が起きなくても、人生は続く。
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