第3話 死に至る病、そして
突如現れた幽霊少年は異世界小説を横取りすると、店内のコミックコーナーの方へと一目散にかけていく。
「え、ちょっと――」
後を追いかけたほうがいいのかな?
でも幽霊だし……。
てか今のって何?
万引き?
私が3秒ほど迷っている間に黒づくめの男はダッシュで幽霊少年を追いかけていく。
つられて私も走り出す。
「うわあああぁ」
将太郎の情けないような叫び声が聞こえる。
「将太郎!?」
将太郎の元へと急ぐ。
「ほ、本が宙を浮いて……」
幽霊が見えない人にはそう見えるのか……。
将太郎が顔面蒼白になりながら指差す先には幽霊少年と黒づくめの男がいた。
「お前、いくらなんでも万引きはどうかと思うぞ」
男はそう言いながら、手で銃の形を作る。
フラッシュバックする3年前の光景。
「お前さ、死んでからもこんな姿晒して恥ずかしくないの?」
「マジで来世はまともな生き方するんだな」
「テスト頑張ってね~!」
もしかしてこの人が、3年前の――。
目の前の黒づくめの男は幽霊少年に銃口を向けている。
「それ、ちゃんと売り場に戻すか、そこのお姉さんに渡せ」
首を横に振る幽霊少年。
「お前、あんまり言うこと聞かないと撃つぞ」
なお、首を横に振る少年。
銃口に怯えている。
「はあ~いくつか知らないけど、万引きはなしだろ。常識的に考えてさー」
「そうじゃない!」
幽霊少年がやっとのことで口を開く。
「そうじゃなくて、どうしても果たしたいことがあってここに来たんだ」
「ごめん。俺お前の姿は見えるんだけど、何言ってるかまで聞こえないんだ」
「あの……私には聞こえます!」
二人の会話に割って入る。
「え? まじ?」
「何か果たしたいことがあるって言ってます」
幽霊少年は顔を輝かせて私を見る。
「俺が見える人はほかにもいたんだけど、俺の声が聞こえる人にやっと出会えた!」
「私もまさか声が聞こえるなんて思ってなかったよ……」
御守りの指輪を持っていたときは幽霊は見えもしなかったし、声なんか聞こえたこともなかったのに……。
幽霊少年には悪いが声が聞こえて嬉しいことなんかない。
「実は、これを見に行きたいんだ」
幽霊少年はコミックコーナーに貼ってある映画のポスターを指差す。
ポスターには『シン・エウァンゲリオン劇場版』の文字が躍っていた。
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