舞台設定が秀逸かつ狡猾で、重層的に楽しめる仕組み

  • ★★★ Excellent!!!

貞操逆転といいながらも、じつは男女の在り方をひっくり返した仮想世界という舞台設定で、二倍以上楽しめる秀逸な「からくり」には目を見張る
タイトルと出だしの軽薄な筆運びに騙されてはいけない

まずは、素のまま字面通りに楽しみ、次に もう一度 男女の立ち位置をひっくり返して楽しむ事が出来る
あとは、個別に性別を入れ替えて 何度でも反芻して楽しめる
例えば、主人公をTSしてマッチョな筋肉美女とし、その主となる姫君を紅顔の美少年 王子様とするだけでも美味しい
その他の登場人物は 男女を入れ替えても、全く違和感がないほど性別が気にならない個性を持っている むしろ、みな立派な漢である
主要な人物だけはそのままに、周囲を取り巻く脇役だけ性別を入れ替えても十二分に楽しめる 姫君に心酔する地方領主や彼女の興した夢のパレードに身を投じる落穂の衆人たちは男女の性別など意味がない

くわえて、男女の在り方が逆転しているという狡猾な世界設定が、創作の苦しみも喜びも知らず無責任な攻撃を起こす いわゆる「性の平等」を僭称する輩の目を塞ぎ、口を封じる

単純にそういう輩は、力無く 愚かで 他力本願な 惰弱な男たちの表現に喜ぶように誘導する筆者の狡猾さがひときわ光る
むしろタイトルや第一話の軽薄な筆運びは、見事な煙幕となっている

このような世界での女性は、我々の世界の女生とは大きく異なる生物なのだろう
月のモノなどという厄介なモノは選択淘汰され、一生に子を孕む機会が僅かで多産は望むべくもないだろうが、食物連鎖の頂点に立つ強者としては、むしろあるべき姿であり、我々の強者でありながら多産が可能という在り方こそ異常といえるだろう

これは深海のギャングたるチョウチンアンコウを擬人化した物語なのだ