第3話 あれは「彩」、イロドリって書いてあるんだよ。

「アート、誰が近くに居るかわからないから今からは…」

「わかってるよ〜、京子とお姉ちゃんとお兄ちゃんでしょ?」


そんな事を言いながらスーパーマーケットの前に来ると案の定知り合いに出会う。


「ちぃちゃん!」

「わ、りぃちゃんだ」


コピーガーデンの神様、テッドの奥さんをしているリリオの基になった私の友達理緒ちゃんが買い物帰りで出会う。


「ちぃちゃん?旦那さんとちぃちゃんの子?」

「あはは、違うよぉ。この子は上司さんの子供さん。仲良くしてるから今日はウチで3人ご飯なんだよ」


「そっかー」

「ほら、京ちゃん。りぃちゃんにご挨拶」


「こんばんは京子です」

「はいこんばんは理緒です。

ちぃちゃん、また今度お茶しようね」


そんな話でりぃちゃんは帰って行く。

ビリンさんはこっちのリィちゃんには面識がなかったのか驚いている。


「今のがリリオの?」

「そうだよ」


「まさかジョマ…」

「多分偶然だよ」


そう言って3人でスーパーマーケットに入るとビリンさんがカゴ。

私がアートの手を繋ぐ。


「お肉多めにしてね〜」

「いいよー」


「2人とも食の好みがそっくりな」

「そう?」

「仕方ないよ。私を祝福したのはお姉ちゃんだから似たんだよ」


まあそれはそうかも知れない。

私は一度神化をしてしまった時にアートに力を貰ってもらう事で半神半人に戻れた。

そしてアートもその経験からこの年で並の神を凌駕している。


「お肉とルーと明日のパンとサラダの野菜…。京ちゃんは何のジュース?」

「りんご!」


「お前たち本当にそっくりな」

ビリンさんが笑いながらカゴにりんごジュースを入れて行く。


「ねぇ、お姉ちゃん、お兄ちゃん」

「どうしたの?」

「どした?」


アートが指を指したのはお弁当のPOPでそこには豪華なお弁当とカラフルな色遣いで「彩」と書かれていた。


「弁当?」

「うん。美味しそう」


「京ちゃん食べたいの?」

「うん。あとはあのピンクと黄色と緑色の字が気になったの」


「あれは「彩」、イロドリって書いてあるんだよ」

「イロドリ?」


「うん。綺麗に色をつけるとかそんな感じかな?」

「ママのお仕事!?」


「あー、そうだねジョマの装飾も世界に色を付けたり輝かせたりするよね」

「そっかぁ。お姉ちゃん、あのお弁当の野菜いらないから全部お肉にして作って!」


「えぇ、お野菜食べなよ」

「えぇ、お姉ちゃんはお肉弁当嫌い?」


「うっ…」

「だよな。チトセが今度作ってくれるってさ」

言葉に詰まったタイミングでビリンさんがアートに援護射撃をする。


「やったー!」

アートが喜びながら私に抱きついてくる。

神でも子供は子供だ。

やはり可愛くて仕方がない。


買うものは買ったので後は帰って作るだけ。



6年前は苦手だった料理も調理の専門学校に通って今もガーデンで料理関係のあれこれをメインに仕事をしているので段取り良く作る。


その間も考えてしまうのはアートの事だ。

アートは知る限り3回程、問題行動を起こしている。

小さなトラブルは数えきれない。

小さなトラブルは子供なら仕方のない事で終わると皆が笑って許す。


3回の問題行動も神の世界もガーデンも好意的だが東さんとジョマだけはアートを叱り付けた。


1回目はまだ幼稚園に入る前。

公園で見かけた小鳥が烏に襲われた。その時に神の力で小鳥を生き返らせて仕返しに烏を殺そうと神の力を使おうとした。

勿論人前で力を使う事を禁じていたし何より死んだ命を蘇らせる事を対価も無しに行う事を東さんもジョマも許さない。

その時もアートはお説教をする東さんから逃げて私の所に瞬間移動してきた。


「千歳!鳥さん助けたかったの!」

幼さの残る言い方をしたアートに手を当てて何があったかを追体験して事態を知った私は少し意地の悪い質問をする。


「アート、あの小鳥が生き返ってご飯を食べた時、他の小鳥がご飯を食べられずに死んでしまったらどうするの?」

「え?」


「殺そうとした烏が地球の神様のお気に入りだったら?アートは嫌われてしまうわよ?」

「そんな…え?ヤダよぉ」

そう言ったアートは困って泣きじゃくった後で少しだけ嫌そうな顔で諦めてくれた。



2回目は幼稚園に入園した年でインフルエンザが流行った時にアートのクラスだけは誰も罹患しなかった。

すぐにアートの仕業だとジョマが見破って注意をした。


「お休みやだ!皆と遊びたいの!」

「アート!」


ジョマに怒られたアートはすぐに私の所に来た。

またその日も予防の大事さや風邪を引く事で学べる事もあるからと教えて「来年はやっちゃダメだよ」と言い聞かせた。



そして3回目は友達のお迎えに来ていたママさんの大病を見破って治療してしまった。

アートはお友達のママが死んだら可愛そうだからと泣いてしまう。

未だに私もコッソリと助けて、バレて怒られる事もあるので気持ちがわかる。


「アート、東さんとジョマが言いたいのはお友達のママを助けたのに別の子のママは助けないの?全員助けられるの?それでアートが疲れたり助けられない人が出て悲しい思いをして欲しくないのよ」

そう言って少しだけわかってくれた。


アートは18歳で神化した私の力をもらった影響でまだ6歳だが12歳くらいのコミュニケーション力があってそこそこ大人と会話が出来る。


それも申し訳ない。

何かをした際に子供としてではなくもう一段上の注意をされてしまうのだ。

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