第2話 やはり子供に神の力は不便でしかない。

私は着替えてからリビングに行くとアートに話しかける。

「アート、今日は千歳とアートは千歳ご飯ね。

お父さんとお母さんはアートのパパとママとご飯に行くって。仕事の話をしたいんだってさ。いいよね?」

「うん!いいの!?」

明るい笑顔で嬉しそうにするアート。


「いいよー。じゃあ玄関でパパとママを待とうか?」

私達が玄関に行くと見計らったように東さんとジョマがくる。


「千歳様、いつもすみません」

「いいよ」

困った顔のジョマが謝ってくる。


「アート、きちんとお出掛けする時は言うように言ったよね?」

「…うん」

東さんに言われてまたしょんぼりとするアート。


「アートは言わないで来たの?」

「…うん」


「そっか、じゃあパパとママにごめんなさいしてね」

「はい。パパ、ママ、ごめんなさい」


「はい。次からは言ってね」

「そうだよ。ママは心配しちゃうからね」


そう言ってからリビングに行くと外に出る格好のお父さん達が東さんを待っていた。


「東、今晩は期待していいよな?」

「常継、料亭を予約したよ」

「ふふ、副部長、雪月花亭ですよ」


うわ、本当に高級料亭を予約してるよ。

余程東さん達もアートが心配なんだろうな。

これは私も気合を入れねば。


当のお父さんは和食の顔になって興奮している。

「マジか!?行くぞ千明!」

「はいはい。すみません東さん」


「いやいや、僕達はお金を殆ど使わないからね」

「じゃあ千歳様、アートをお願いしますね」

「おっけー」


「アート、千歳を困らせたらダメだよ」

「うん」


私とアートは東さん達を見送ってからリビングに戻って冷蔵庫を見る。

「あー、今日のお母さんは魚だったかぁ」


多分この感じはカジキの煮付けだ。


「アート、うちにあるご飯だとお魚だなぁ。千歳とお買い物に行くなら千歳のハヤシライスだけどどうする?」

「行く!」


「だよねー」

私は笑いながらバッグとお財布を用意する。


「千歳、ビリンは?」

「え?呼んでいいの?」


「なんで呼ばないの?3人家族しようよー」

「そうだね。じゃあっと…おーい、今さぁアートが来てて今日は私のハヤシライスだけど…わかったよ。じゃあウチのリビングに来てね」

ビリンさんは殆ど説明することなく「ん?アート居るの?行く。おう、父さん達に出かける話をしたら行くわ」と言って終わらせる。


「ビリン来る?」

「うん。あ、ビリンさんの洋服出さなきゃ。

私が神如き力でビリンさんの洋服を用意しているとリビングにビリンさんが来る。



「こんばんは。お邪魔します」

そう言って現れたビリンさんは目を開けると「あれ?ツネツギさんとチアキさんは?」と言う。


「ちよっとね。今日は私とアートとビリンさんの家族の日なんだよ。これに着替えてよ。買い物からだよー」

私が用意した洋服を渡すとビリンさんが頷きながら受け取る。


「成る程な。呼んでくれてあんがとなアート!」

「ビリン!」

アートは6年経ってもビリンさんが好きなので喜んで飛び込む。


「おっとと、着替えるから待てって」

「ビリン早くー」

アートがビリンさんに抱き着きながら催促をする。


「アートがくっ付いていたら着替えられないだろ?」

「えぇ、頑張ってよぉ〜」


そんなアートにビリンさんは「アート酷え」と笑いながら頑張って着替える。


「お待たせ。んで、どうすんだ?」

「スーパーマーケットまで買い物。今日のお母さんは本当なら煮付けの予定だったんだよ」


「お魚は昨日の夜食べたの」と言ってお魚にNOを突きつけるアートを抱っこしてビリンさんの前に出しながら私は「だそうです」と笑う。


「成る程な。んじゃ荷物持ち頑張るかね」

「頑張ってねー!」


3人で手を繋いでスーパーマーケットまで行く。

その間にビリンさんがアーティファクト「千歳の力」に入っている私の神如き力で話しかけてくる。


「んで?アートって今日は何があったの?」

「まだ見てないよ。ご飯の後に調べるよ」


「了解」


本来、半神半人の神如き力は神には傍受とか覗かれるケースもあるがアートの力の源は私だし私は真名を知っているのでアートに覗かれる心配はない。

後は真名を知る東さんとジョマもアートに覗かれる心配は無い。


今回は何だろうか?やはり子供に神の力は不便でしかない。

そう思って歩いているとビリンさんが「チトセ、手に力込めて」と言う。


「へ?」

「アート、大ジャンプだ!」


「え?」

ビリンさんが驚くアートを引っ張り上げる。

私も慌てて真似をするとアートがキャッキャと大喜びをする。


「よし、やっと笑ったな」

「え?笑ってなかった?」

アートが私から手を離すと頬をさする。


「なんか変な顔してたぜ?」

「ビリンのくせに〜」

アートが私の真似をする。


「アート酷え。チトセの真似すんなよな」

「くせに~。あははは!」

そんなやり取りの後で私はアートに声をかける。

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