恋愛と次元

そう、重大な事にめぐも

ルーフィも気づいていない。


ルーフィは、魔法使い。

生きている次元がちがう。


でも、恋は不条理なものだから

理屈で恋したりしない。


もっとも、めぐが

この先、魔法使いとしての人生を選ぶなら

ルーフィのような魔法使いになれる、のだけれども。


ひとの記憶は、3次元時空間に沿っているものだ。


生まれてからの時系列に沿って、記憶が積み重なって行く。


赤ちゃんの頃、快かった経験が

無意識に、同じ経験を好んだり。



木漏れ日の散歩道を、お母さんと

一緒にあるいて

きらきらする光、風の爽やかさが

好きになったりすると



お散歩すると、その時を思い出して


いい気持ちになったり。




そこが、海辺だったりすると

潮の香りが好きになったり。



そんなふうに、嗜好は作られて行く。




恋愛も同じで


めぐのように、お父さん、おじいちゃんが優しかった人は


そういう、庇護的な彼氏を好きになったりする。



ルーフィが、そうだったかどうかは

めぐにしかわからない(笑)。



めぐにしても、理屈で選ぶのではなくて


快かった記憶が、それを選択させるのである。と

ジグムント・フロイドなどは

類推的に持論を述べていたりする。





モペッドが、カーブの連続した

ワインディング・ロードを離れ

町に、少し近づいた直線道路を

走る。



スロットルを、めぐは少し開く。



ワイヤーに引かれたスロットルバルブが開かれると


エンジンにつながる空気管の遮断が開かれる。


同時に、バルブの底にあるニードル、円錐の針が引き上げられる。


空気は、管の内径に沿って流れ

ニードルは、先が細くなっているので

ジェットと呼ばれる燃料噴射穴からの

燃料が増える。


即ち、空気量に見合った燃料を

エンジンは、吸い込めるようになる。



本来の、シリンダ容量を100%とすると

その時の吸い込み量、それを

充填効率、と呼ぶが


それに依って、爆発力、エンジンの力は変化する。



PV=nRTなので

nが増えれば、Tも上がるし

Pも上がる。


P、つまりシリンダ圧力が上がれば

ピストンを下げる力も増える。



出力制御である。




それを加減する事が、楽しい運転になるのだけれど


たとえば、めぐのようにバイタリティーあふれる人々は


出力過多(笑)だったり。



そんなふうに、エンジンは生物的だ。



その制御を楽しんでいると、めぐの右手、アクセルグリップの加減で


後輪の回転に変化がある。



「なにかしら??」


速度を上げて行くと、エンジン回転が高くなり、すこしショックがあって

スピードは上がっていくのに、エンジンの回転は下がる。

そしてまた、速度は上がっていく。



「ああ、ギアが変わったんだね」と

ルーフィは言った。




このモペッドは自動変速である。


エンジンの回転が上がっていくと、

自動的に歯車が切り換えられて

速度が上がるようになっているのだ。

精密な仕掛けだけれども、機械動作だ。


すり鉢のような物体が、エンジンの出力軸についていて


一緒に回転している。



そこに、錘になる金属球が

幾つか、置かれていて

落とし蓋に抑えられている。



そうすると、エンジンの回転が上がって

遠心力が高まると、球は外に出ていこうとするので

押さえ蓋は、上がっていく。


その、蓋の位置変化で

ギアを押し引き。

後輪に対するエンジンの回転を変えるのだ。



たとえば、発進する時は

力が必要なので


後輪1回転に対して、エンジン4回転とすれば


爆発は4回。それだけの力が出る。


この時、減速比1:4と言う。



モペッドがスピードに乗ったら、そんなに力は要らないから

後輪1回転に、エンジン1回転でも

走れる。



つまり、発進の時、押さえ蓋をバネで下げておいて


その時、歯車比率がエンジン側4、タイア側1のギアにつないでおけば


発進の時は力が出るのである。



その、ギア切り換えの時に

めぐは、ショックを感じた。


ギアを切り替える時に、アクセルを

緩めるような

仕組むがついているから、なのだけれど


その仕組みがわかっていれば

それほど気にする事もない。




けれど、知らないうちは

ちょっと怖かったりもする(笑)。




そんなものだけれど、それは

経験をして、覚えていくもので


魔法や、恋愛を

めぐが、経験して覚えていくような

毎日、

それに似ているかもしれない。

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