CH3COOH

海沿いの風は、夕暮れになると

少し涼しく感じられて。


秋を思わせる香りがする、と

めぐは思った。


不思議なこと。


秋特有の香りって・・・・?



おそらく、空気の中に何か

秋に咲く花とか・・・。植物の放つ物質?



香りは、化学物質なので


その何かを感じるのだろう。





渚を渡ってくる風には、潮の香りがする。


それも海そのもの、と言うよりは

そこに棲んでいる生物の放つ化学的物質と言えるだろう。

大抵は植物なのだけれど。




生き物はエネルギー代謝をするので、何かを取り入れて、出す。


それが営みである。




波打ち際をモペッドは走る。冷えた風は、エンジンの吸い込む空気密度を上げるので


必然的に、燃料も濃くするべきである。


さきの、PV=nRTで言えば、nが増えるので

全体の数値が変わる。


空気・燃料比率をA/Fと言うが、それをストイキミクスチャにするためには

燃料を増やす訳だ。


燃料は炭化水素なので、それと化合する酸素を増やすのである。

x(C3H12O6):x(O2)=x(CO2):x(H2O)


であり、これは酸化反応である。


実際には空気は酸素だけではないし、完全に燃焼しないので

それが、例えばエンジンが放つ匂いであり


秋の香りのように、人によってはエンジンの香りを好む人も居る。


それは、大方炭素と炭化水素の燃焼する時の匂い、焦げたような香気である。


本田宗一郎は少年期に、自動車の後を追いかけてこの匂いを楽しんだと言う。



後日、モペッドを自作する訳なのだが、彼にとっては

秋の香りのように芳しいものであったろう。



カルボン系の香りは、例えばパンの焼ける香り、ご飯のお焦げ、

ステーキ、などのように食欲をそそるサインでもあるが


それは、長い人類の食の歴史の中で、「それが美味なもの」と言う

認識で積み上げられた記憶の一部である。



化学的に見れば、ただの気体である。



好悪の感情と結びつくのは、ひとそれぞれだ。




それは、恋愛も同じ。




好きな人のタイプなども、記憶とパターン認識であり


似たような環境で育つと、似たようなものを好む傾向もあるから


同じ人に恋してしまうのも、仕方ない。


いつか、解決できるといいのだが・・・・。









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