老犬

絵本、「ゆきのひとひら」に

めぐが乗っている事などは


もちろん、たまぁの知るところではないけれど。


それだけ、探すには

なんだか理由があるんだろう。



そんなふうに、たまぁは思って



部屋に戻って。


ベッドで、寝転がりながら

「ゆきのひとひら」を開いて

絵を見ている、たまぁの飼い主の子を見て。



ぴょん、と

ベッドに飛び乗って。


めぐのいる絵本と、飼い主さんの間に

割って入った。



「あ、だめえたまぁ。」と、その子は

猫がじゃれて来たとしか思わない(笑)。



ふだんも、じゃれているように見えて


猫は、何か意味があって

邪魔をしているのかもしれなかったりする(笑)。



猫のことばは、ひとには

わからない。



魔法使いなら、わかるのだろうけど。







一方のルーフィは、魔法使いだから

猫や犬の言葉を使って

絵本を取り戻せないかな、と

考えていた。



この考えは科学的で



1980年代、日本の京都大学

霊長類研究所の観察グループが

ゴリラや、ハヌマンラングールの

言葉を覚えて、群れと共に

行動し、観察をして

成果を得た事もあった。


言葉を覚えられない事

が口惜しい研究者は

その成果を快く認めなかった。



だが、今では

それが正しかった事は

明らかだ。


彼らには、彼らの言葉がある。



それと同じように、猫や犬の言葉を

覚え、使う事は

覚えられるひとには、覚えられる

ものであったりもする。




ルーフィは、その家の周りを歩いて

見回して。



一匹の老犬が、とっこ、とこ。

ドアを開けて出てくるのに出くわして。


声を掛けてみた。



犬なら解ってくれるかもしれない。

そう思ったのは、生まれ変わって

動物界にいるなら、以前は

人間界にいたかもしれないし

人間界にめぐの事が広まってしまう

事もない、そんな風にも

考えたから。


「犬がそう言っていた」と

誰か、犬の言葉が分かる人が

言っても



京都大学の研究者みたいに

周りに理解されないのがオチ(笑)

だから。





犬は、毛並みの良いレトリバーで

人の言う言葉が分かるなどと

言われている種。



それは、人にこれから生まれ変わるか

人から生まれ変わった犬が多いからなのかもしれなかった。




盲導犬や介護犬で、良い事をして

心優しい人に、生まれ変わる犬も

あったりもした。






その犬は、静かにルーフィの言う事を理解した。



「ああ、それじゃ・・・・。」と


ドアを開け、部屋に戻っていく。




誰も見ていないけれど、ドアを

閉じて(笑)。



ルーフィは、、不可思議な気持ちで

それを見ていて「犬にもいろいろいるんだな」と。





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