虫の生、ひとの生


にゃごは、猫だけど

もともとは魔界から転生してきたので

燕に捕らえられた羽虫の意識が、

すこしわかったりする。


虫の意識は、ひどく単純なものであるから


これから、起こる事などを

恐れている訳でもない。


実際的に、目の前の情報に反射しているだけである。

そこは、やや救われるところである。



そして、燕の為になった事で

虫、としての彼は

少しだけ、社会の役に立った事になるから


次の転生は、少しだけ

高級な生物に転生する事になるだろう。



摂理である。



動物であっても、原生動物のように

意識すら無いものから、人間のように

文化を持つものまで

様々な生物が生きている。

人間と、わずかな高等生物だけが

文明を持ち、他者を欺いたりするのは

不思議な事である。


高い知識を持つと、無いものを「ある」と

見せ掛けて


利益を得ようとするのは、おそらく

猿あたりに始まる文化である、などと生物社会学は教える。




もちろん、猿は貨幣流通などないから

食料を得るための、他愛ない営みで

それは、微笑ましいものだ。



転生を繰り返し、ようやく人間になると


欲望の果てに、

たとえば、国の政治家になり

ありもしない価値を、あるように

見せ掛けて


紙幣を印刷して、金融緩和、などと


嘘をついて、偽札を作ったりした

政治家や官僚が、転生して

今、虫になって燕に食われたりしている。


しかし、それで

燕は雛を育て、空に舞うのである。


自由が得られずに、了いに

虫になってしまた彼も


空を舞える鳥の一部になるのだ。


それは、ひょっとすると

幸せな事かもしれない。







のんびりと家路に就くにゃごを

万感の思いが包む。

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