にゃごも、お年頃

よく言われるように、猫は

人間より早く年を取る。

でもそれは、人間

から見ると、そう見えるだけ。



にゃごも、もちろん猫だから

スピード感のある毎日を過ごしていた。



それでも、まだまだ子猫。

はじめて、お散歩をした時は

ちょっと、感動ものだったり。


おうちの縁側から、外に出るにしても


ステップがなにしろ、猫にとっては

大きいので、こまったりして。




最初は、おばあちゃんに

下ろしてもらって。



お庭を、ちょこちょこ歩いたくらい。


それでも、十分冒険だった。



お庭の石も、畑のトマトやきゅうりも

猫から見ると、大木や岩のようだし

しなやかな脚に、土の感触は

ちょっと、湿っていて。


にゃご。



ニガテだったりした。



きれいな芝生の上だと、足元が

爽やかだったけど。


あしのうらに土が付くの、ちょっと嫌だったりもした。



なぜか、おばあちゃんは

外に行く事をふつうに許してくれたので


お散歩そのものは、好きだった。


庭石を伝って、土に触れないように行き、ジャンプして木に昇ったり。


木登りも、楽しかった。



このあたりには、他に猫はいないらしくて


のんびりとお散歩ができた。


お空で、鳥の声が聞こえても

にゃご、が狩人でないと思うのか

のどかなさえずりを、聞かせてくれるのだった。




草原を見下ろしながら、梢でお昼寝するのは

とても、いい気持ちだった。


お昼頃になると、おばあちゃんが

呼ぶ声が聞こえて。



「にゃごー、ごはんよー」

その声は、どこかめぐの声にも似てる。



のどかな響きだった。






時々、草原の向こうにまで

お散歩する事もあったりもした。




にゃごは、キジトラだけど

茶色で、ちょっと本当に虎みたい。



おおきくなったら、虎になるのかしら?


なんて、めぐは面白い事を想像するけれど

もちろん、そんなことはない(笑)。




時々、草原で

美人猫さん(笑)に出くわす事もあった。


けれども、にゃごは

どういう訳か、あんまり

美人猫さんが、それほど気にならなかった。



当然かもしれないけれど、にゃごは

天使さんと一緒で、しあわせだった。



それで、にこやかに

美人猫さんにご挨拶。



にゃごの、しあわせそうな感じは

美人猫さんにも伝わるのか


美人猫さんも「ごきげんよう」などと

ご挨拶を交わすのだった。



風爽やかな季節、猫たちには

恋の季節であったかもしれない。



猫は、人間と違って

恋の季節感があるから


その時期は、猫たちにとって

楽しい時期だった。


お祭り、みたいなものかもしれなかったり。



そういうわけで、パートナーのいない


美人猫さんなどは、紳士たちからの

お誘いが、ひっきりなしだったりする。




それで・・・・・ある時。




楡の梢でのんびりしていたにゃご、に


いつもの美人猫さんは、声を掛けた。




「そっちへ行っていいかしら?」




断るのも悪いし、と

にゃごは、無言でうなづいた。



しなやかな細い足首で、美人猫さんは


にゃごの隣に訪れた。




近くで見ると、確かに美人だな、と

にゃごは思ったりした。(笑)。






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