でも、どこに行ったらいいんだろ、って

わたしは思う。



ルーフィは、うんうん、と頷く、でも

ぬいぐるみの格好のままなので、なんとなく滑稽で

わたしは微笑んでしまう。

魔法を解くと、あのカッコイイ彼になるんだけどなぁ。

「どうして、見られたら困るの?」



それは、お約束だからさ、と(笑)ルーフィは笑う。


お約束、まあ、プロトコールなんて言葉だと馴染めるかな、と付け加えて。




コンピューターの世界の人にお話を伺ったりすると、そういう言葉を口にしたりする。


コンピューター同士は約束事で動いている。




そういう事なのだそうだ。


機械の、未来的な通信なのに

意外と、昔ながらの約束事、なんて言葉が出て来るのは

ちょっとおもしろい。



人間同士はけっこういいかげんで

約束事を守ると言うよりは、約束事を上手く応用している、そんな感じになっていると思う。


わたしだって、取材費用を編集長さんに、さっき言ったみたいに

余計に貰ったりする。

それが当たり前だし、人間同士の約束ってそんなものだと思う。


魔法使いさんそうなのかなぁ。



ルーフィに、聞いて見ようとすると

彼は、それに答えようとする。


「魔法使い同士は、掟、って言うのかな。自然に守るね。元々魔法って微妙なものだから、心に乱れがあると使えなくなったりするんだ。だから掟破り、なんて事すると魔法に歪みが出たりするんだ。」




ふうん、と わたしは

解ったような、そうでないような気持ちで。


「恋すると、勉強が出来なくなったりするみたいな感じかなぁ」なんて、ふと思って。



ルーフィは、楽しそうに笑顔で「そうかもしれないね」と言い

ショパンが仔犬のワルツを書いた時、隣に恋の存在があって。だから軽快で嬉しそうに聞こえるね、と話を継いだ。



わたしは思う。そういえば、ショパンのお友達のシューマン、クララを奥様になさって。

いい曲を書くんだけど。


でも、ブラームスさんはクララに恋していて。

その気持ちが、曲に現れてるみたいな、そんな気がする。


約束事を守らないと、すっきりしないから

魔法使いさんは、魔法が乱れたりする。

音楽家さんは、心の動きが曲に現れる。


すっきりしないと、ダメかなやっぱり(笑)なんて。



「ねぇ、ルーフィ」

声に出して言ってみたくて。


周りに誰もいないのをたしかめてから。


何?と

彼は、爽やかな声で。

でも、見た目がぬいぐるみのままなので

ちょっと、そのギャップで

笑ってしまう。



何を笑ってるのさ、って

彼はちょっと不満げに(笑)。



早く旅に出ようよ、このスタイルは疲れるのさ、なんて。


「どこに行くの?」と

わたしは、ルーフィに尋ねる。



うんうん、と

彼は頷く。

ぬいぐるみのまんまなので

可笑しくって笑っちゃう。



あんまり笑ってると、不審人物って思われるよ、って彼は言う。



でも、可笑しいんだもの。


ちっちゃな子が、おままごとしてて

お人形さんに話かけて、笑ってたりするけど

あんな感じに見えるんじゃないかしら。



「それは可愛い子供だからで、大人の君がそうしてたら変だよ」と

彼は言う。




わたしは大人だったのね(笑)。



そんな事、思った事もなかった。


ハイスクールくらいから

ずっと、気持ちは変わってない。



でも、周りから見るとそうなのね。



「うん」と

彼は、さっきみたいに空間に円を描いた。

半透明のスクリーンみたいに、どこかからの視点のわたしが映る。


真後ろとか、斜めからとか。


カメラみたいに。



彼が、ひょい、と

それをスライドさせると

同じアングルで、ハイスクールの頃のわたしが映る。


「すごーい、どうなってるの」と、思わず声にしちゃった。


彼は、静かに静かに、と言った。



魔法だもの。



見比べると、やっぱり違ってる。



大人っぽくなってるのかな、淋しいような、怖いような...


ふわり



「おとなっぽくなるって、いい事なのかなー」

と、わたしがつぶやく。ルーフィは、にこにこ。


「いいと思うよ。思わなくてもなっちゃうし。それは

仕方ないけど、すてきな時を過ごしていれば

すてきなレディになる、と思うよ」


英語じゃないけど、なーんとなくスマートなのは

やっぱりイギリス、紳士の国だからかしらって

わたしは、そんな彼をすてきに思う。

でも、言葉には出せなくて、

思ってるだけなんだけど。


そんなとこは、ハイスクールの頃と

変わっていない、って思う。


でも、なんとなく、少しづつ

変わっていくのかな。



どんなふうに?


ぼーんやり、イメージしていたら。

気持ちがふんわりしてきて、ふわふわ

浮いてるみたいな気持ちになった、午後の

カフェテラス。



「あ、ほんとに浮いてるね」と、ルーフィが言うので


あれ?と思うと


白いキャストのテーブルが、遠く感じた。



空間を飛び越えるんだわ、また.....。



でも、ルーフィと一緒なら、大丈夫!




flyin'.........


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