もうひとりの「わたし」




一瞬、のようでもあったし、長い時間みたいだったかも

しれないけど


気付くと、マロニエの小径。そこは、わたしの

通っていたハイスクール。



静かな、丘にある学校。

女子校だったんで、気楽だったけど(笑)。


男の子って、ちょっと怖いと思ってた

わたしには、ちょうど良かった。



「どうして、ここへ?」モノ・ローグ。



トート・バッグの中にいたルーフィは

「さあ、来たかったんじゃない?」



来たかった...?まさか。



携帯電話を見ると「圏外」。



また、時間を飛び越えたんだわ.....。


違う世界



思い出の中の学校と、どことなく違う。

そんな気もしたけれど、でも、そんなものかしら。


マロニエの並木も、チャペルも。

レンガの壁も、一緒なんだけど....。


赤いおやねのスクール・バス、泉のある中庭や

石垣のある裏庭の向こうには、ずっとずっと平原が続いてて。


ピーター・ラビットみたいな野うさぎさんが

ときどき、あそんでたり。


キャベツ畑もある。


「ほんとに、ここかなぁ....。」って、わたしがつぶやくと


ルーフィは「ああ、思い出と違う、って事かなぁ。そうかもしれない、けど。」



制服、なんて無いから

みんな、好きな服着てた。


今は、何時頃かな?と、時計台を見ると、2時。


そろそろ、お庭そうじの時間かしら。


そう思ってみていたら、ぱらぱら、と

生徒たちが降りてきた。


タータンのスカートの子もいたり、ジーンズの子もいたり。

女の子ばっかりなので、気は使わなくてよかったけど。



マロニエの並木から、それを眺めてるわたしたちって。

「なんか、探偵さんみたいね」



ルーフィは、ぬいぐるみの格好のまま、トートバッグの中で

「コメディだなぁ、どう見たって」


そういえば、ぬいぐるみ持ってくる探偵、っていないわね。

新しいパターンかも。


そう思って、にこにこ。



そしたら。


外階段から降りてきた子の、背格好に

どこか、見覚えがある。



少し、小柄で、やせてて。



「....あれ、わたしかなぁ....でも、なんとなく...髪型も違う。」



さっき、ルーフィが見せてくれてたわたしの姿は、

記憶の中の私、そのものだった。

長い髪を束ねて、素っ気無かったけど。



でも、今、そこに居る「あの子」は....


わたしと似ているけど、どこか.....違う。

髪型だって、短く揃えてる。



「どうしたんだろ」と、わたしが言うと


ルーフィは「ひょっとすると、違う世界に来ちゃったのかな」


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