しあわせ




「あのね、ルーフィ」



彼は、微笑みながら、どうしたの?と答える。



視線を交わす、それだけでしあわせ。


逃げ出したくなっちゃう。


相反、アン・ヴィヴァレント。なんて

学校で習ったような心理用語を


こころの中で反芻しているわたし。


彼は、ただ微笑むだけ。



「そう!」


唐突に閃いたわたしを、ルーフィは予想していたように


にこにこと笑いながら。





「こんな気持ち、それが魔法なんだわ、それを忘れたくなくて、

みんな、絵や小説や音楽...そういう形で伝えるの。



それも、魔法なのね。」



ルーフィは、やさしくうなづく。



だから、みんな。


それを大切にするひとたちって、そういう時間を大切にするんだ。



時間どろぼうさんに盗まれるないように。そんな気持ちを。







「そう、みんな、そうして

自然な時間を思い出してもらおうとして、作品に願いを込めたり」


ルーフィは、ささやくように。




....いつも、そう。恋していたい。



でも、いつかは忘れちゃう時がくるのかしら。



想像すると、ちょっと怖いような。

そんな日が来てほしくないって思う。






でも、わたしもルーフィに会う前は

やっぱり時々は時間に追われたような気になったりして


早足になったり、早口になったり。




そんな時、ちょっとしたきっかけで

ゆったりとした時間を取り戻せたとき、ああ、わたしって

愚かだったのね....



そう思うときもあった。



そんなきっかけが、みんなにあるといいなって思う。

ジョン・レノンも、ミシェル・ポルナレフも。


そんなふうに思ったのかなって、ちょっと思った。

ルーフィは、囁く。


「ここは、異世界。そう、ご主人様の夢が存在する、4次元の世界に僕らは居るんだ」



そう、わたしは忘れていた。


闇の中に、時間量子、と言う粒々が流れていて。


光る、粒々で。


時折、スピードが早い粒々があったり。

流れに淀みがあったり。



「それが、4次元の証。時間量子の早いものは、それだけ時間を逆転して進んでる事になるんだ。ニュートリノが光の速度を超えた、と3次元の世界で話題になったように」

ルーフィは、科学的に答える。



そうなんだ、と

わたしは思う。


ここへ来て解った事は、ご主人様は未来を悲観して眠りに入った、と言う事。


眠りを解く鍵は、人々が

自然な時間の流れを思い出してくれること。


今までのタイム・トラベラーたちは音楽や映画、小説でそれを形にしたんでしょう。


優しい気持ちを思い出せば、いつか、自然な時間を思い出すでしょう、と。



ルーフィは、真っすぐな瞳で「僕らは、それを過去や未来へ飛んで。みんなに優しい気持ちを思い出してもらえば、それでいいのさ」


それが、鍵?になるのでしょうか。


今はわからないけど、そうしてみよう。


わたしは、ルーフィの言葉に深く頷いた。時間旅行、長かったようでこちらの世界では夢の一瞬。


気づくと、いつもの月曜。企画会議に出席するため、お家から坂を降りて。

路面電車に乗って、編集部のある古いビルに、わたしは向かっている。


滞りなく企画会議は進み、わたしは、こないだみたいにカフェに。


と、編集長さんにまた、出会う。


「やあ、Meg,ごきげんよう」と、編集長さんは、にこにこ。


よく見ると、Roofyそっくりのぬいぐるみ(と言うか、中にRoofyがいない、ふつうの)を持って、にこにこしている。

ほっぺをふにふに、とつまんで

喜んでたり。


Roofyは、ささやく「なんとなく気分わるいなぁ、僕じゃないって分かってても」


わたしは、なんだか可笑しくなって。

笑ってしまった。


きょうも、いいお天気。



「それでねぇ、キミの企画」


編集長さんは、おどけているのか

ふつうなのかわからない表情で、お仕事の話をする。



ちょっと気づかなかったけど、

こないだ話した、SF、って事にした時間旅行のお話コラムのこと、と分かって

「はい、あの企画ですね」



編集長は、にこにこしながら

「早速、飛んで見てね」





「は?」

わたしは、あまりに突飛な

編集長の言葉に戸惑った。



編集長は、ふつうに「うん、時間旅行記者、としてライティングしてね。旅費、経費かかんなくていいでしょう」


なんて、ヘンな理解の仕方をされてしまった。


ので、時間旅行は仕事(?)に

なってしまう事になるけど....


経費どうやって落ちる?(笑)「でも、現地までの旅費は落としてくださいね」

と、わたしはにっこり。


編集長さんは、わかったわかった、と

ニコニコ。


それなら、どこだって行く!


「でもさぁ」ぬいぐるみのルーフィは呟く。


「過去や未来に行ってお金、使えないでしょ」


現実的に、それは無理(笑)

魔法でなんとかならないの?(笑)


彼は、女の子だなぁ、と

ため息(笑)。


「時間を飛び越えちゃったら、通貨だって変わってるかもしれないし。そもそもお金使う必要あるのかなぁ」って。


そっか。

お買い物したって、持って帰れないな(笑)。

でも、美味しいもの食べたりしたいし...(笑)


ぬいぐるみの格好で、ルーフィは、やれやれ。と腕組みをしてた。



不思議な縁で、こういう事になって。


時間を旅する事になった。

とりあえず過去の人々が、時間旅行をしてた、って事が分かれば。

わたしたちの仲間かもしれないし。

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