Meg

彼は、語る。

「それは、自然エネルギーの存在が弱まって

人々が人工的なものに傾倒していったからなんだ。ノストラダムスは、それを恐怖の大王が空から降る、と言い

ジョン・レノンはそれをイメージしてごらん、愛が必要だ、と歌った」



そうだったんだ、とわたしは思った。


彼らも時間旅行者だったから、それを伝えようとしたんだ....「だけど、眠っちゃったのはどうして?」


わたしは、思わず。


彼は、ちょっと困ったように「うん、なんとか未来を変えようとしてね。その方法論を見つけに。それは簡単だった。」


わたし、ちょっと拍子抜け。「簡単なの?!」



彼、ルーフィのご主人様はちょっと困ったみたいに告げた。「うん、稚な心で生きていけばいいのさ。ほら、幼い頃って自由自在で、時間に囚われないでしょう。」



そういえば、そんな気もする。ちっちゃい頃は時間が早く感じたり、遅く感じたり。でも、大人になってから

何かに追われるようになって....



彼は、唐突に言った。「それは、損得みたいなものだったり、欲だったり。いずれにせよ、自然に崇高なる時間エネルギーを阻害するものさ。気付いた人々は自然に回帰していった...けれど。」


彼は、淋しい表情をして。

「でも、それに囚われる人々ばかりさ。不思議さ。損得、得したらその利益で豊かになれればいいけど。みんな損得だけに囚われてイライラするのさ。短い時間で多く仕事しようとして失敗したり。それを変える魔法は見つからない....」「じゃあ、方法論は簡単でも変えられないってことなの?」わたしは、ちょっと不思議に思って。



彼、roofyのご主人は

ごく普通にそうさ、と言いこの、不思議な無限大空間の果てへと視線を泳がせ「簡単な事なのに、変えられない、なんてよくある事だね。ミヒャエル・エンデがね、時間泥棒、なんて例えたみたいに。」


わたしはちょっと苛立った。だって、roofyがいなくなっちゃったって言うのに。ご主人様は淡々としてて。「あの...Roofy、彼のことが気にならないんですか?」


わたしは、すこしキツイ言い方だったかな、と

言ってしまってから後悔した。



ご主人は、静かな表情のまま、頷いた。

「うん、気になるさ。でも、彼は一人前の魔法使いなんだ。

自分でなんとかするだろうし、そうできるからこそ

身を挺して君を救ったのだ、と思う。

無鉄砲に飛び込んだんじゃないだろう。」










わたしは、恥ずかしくなった。


そう、ルーフィはわたしを助けるために

どこかに行ってしまった。


それなのに、ルーフィのご主人様を

悪く思ったり。


わたしって、嫌な子....



「ごめんなさい、あの、わたし...。」


と、言いかけた時、ルーフィのご主人様は

涼やかに微笑んだ。



「そう、でも、眠ってしまっていた私が一番悪いのさ。

そのせいで、ルーフィが困ったんだから。

やっぱり私の責任だ。」












優しいな、と

わたしは、ルーフィのご主人のことを

そう思った。



どこか冷たい人、って

そんな風に誤解していた。



そんな自分が、また恥ずかしくなって。

「あの、わたし、何かできる事ないでしょうか。

ルーフィを助けに行きたいんです!」「そうだね....どうしたらいい、と思う?」




ご主人は、静かにそう告げた。




そう聞かれて、ちょっと困った。


時間量子の流れ、それに触れてはならないものに

ルーフィは飛び込んで、そして消えた。

強いエネルギーが弾けて,飛んだ。














...時間の流れ、次元。


「ルーフィは、どこか違う次元に行ったのでしょうか。」


と、わたしは呟くように、彼に尋ねた。



「そうだね、君が念じてみれば、答えは見つかる筈。

いつも、そうだったんじゃないかな?」




ルーフィのご主人はにっこり。


その瞬間!



spark☆!















わたしは、思いがけずに

どこかに飛ばされた。


さいしょに、昔のフランスに飛ばされた時みたいに。


でも、こんどはルーフィはいなくて

わたしひとりだったから


ちょっと怖かった。



こころの中で、ルーフィの姿を思い浮かべた。


きっと、会えるでしょう、そう思って。












つよいひかりが歪んでいるような

川の流れを見下ろしながら


暗い空間を飛んでた。


そんな感じ。



よく見ると、その光の川は

ちいさな、つぶつぶだった。














..そう、ルーフィが言ってた。


「時間量子」。


その川なんでしょう。




ぜったいに、触れてはいけないと彼は言ったのに。


わたしの、ぼんやりのせいで。



ルーフィは、どこかに飛んでいってしまった。



かなしくなった。


泣きたいわけじゃないのに、涙が頬を伝った。














恥ずかしくなった。



ちいさな子みたいに、泣いていて。


わたしのせいでルーフィが怖い事にあったのに

ルーフィのご主人様を怒ったり。



わたしって、なんてひどい子なんだろうと


思い起こすと、とても恥ずかしくなった。


顔があかくなった。「そんなことないよ、君はとってもすてきさ、Meg」


びっくりしたわたしを、背中からふわりと抱きとめてくれた


温もりにふりむくと、空間を漂いながらルーフィはWink。




「ルーフィ!無事だったの。」



わたしは、振りかえりながらルーフィを見た。


夢じゃない。幻想でもない。


やさしく抱きとめてくれている彼。


涙がぽろぽろ、とこぼれた。



どうしてかわからなかったけど、泣いてた。













「....初めて。」つぶやいたわたし。



「なに?」と、ルーフィ。



「....だって、わたしの名前、呼んでくれたの。」



「ああ、そうか、ははは。君っていつも、なんか面白いなあ」


って、ルーフィはまるで、いつもの感じでそう言うの。



うれしい、よかった、けど、なんとなく



どこか抜けてるみたいで。










そんなわたしたち。いつでも、ずっと、こうならいいな。


なんて、思った、自然に。



「名前で呼んでくれて。嬉しい。」

わたし、なんとなくどきどきしてる。


どうしてか、ルーフィに名前を呼ばれると


それだけでうれしくなれる。


だって、今までは...










「君」とか「キミ」、「あの」とか


そんな感じだった。




Meg,Mergarett,だから。


ありふれた花の名前だけど、かわいいお花だし

ちょっと気に入っている。


だけど、ルーフィに呼ばれるとなんか、うれしい。どうして?



どうして、いままでは呼んでくれなかったの?って

聞いてみたい、けど


聞かないほうがいいような...気もする。「そっか、君はお花の名前だったんだね」と

ルーフィはわたしのそばで、ささやく。



急に、なんとなく恥ずかしくなって


わたしは、ちょっとルーフィから離れた。



ごめんなさい...って言った、けど


聞こえたかな、ちいさな声で。



頬が熱い。



どうしてだろ、それまで平気でルーフィのそばに居たのに


急に。


なんか、恥ずかしい。



わたしって...変な子だ。



そう思うと、もっと恥ずかしくなってくる。



ルーフィは、にこにこ。


どうしたの、Meg?って。



ほほえみ。


うれしい。


ずっと、こうしていたい。






時間を忘れてしまいそう。




....そうなんだ。




時間って、忘れること、できるんだもの....



ゆったりとした気持ちでいる、って


こういうことなんだ。



わたしは、ルーフィのご主人さまの言ったことが

わかったような気がした。





時間どろぼう、って喩えられたような

そういう人たちって。



わたしは思った。




なにかに夢中になったり、ひとを好きになったり。



そういう事にめぐりあえば.....。



イメージしてごらん、とジョン・レノンは言った。


はっきりとは分からないけど、愛をイメージして

彼は、ふんわりとした時間を思い出して、と言ったのかもしれない。



そんなふうに思った。

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