第24話 寄る辺なくさまよう機人たち 17
「誰だか知らんが俺の仕事を邪魔する気なら、容赦はしないぞ」
ハリィは憤怒の形相で吐き捨てると、新たな武器を取り出した。
「こいつは対機人用麻痺ロッドだ。人間にさからってお仕置きを喰らいたいか?」
「この辺りでそんな物を使ってみろ。袋叩きに合うのはお前の方だ」
黒崎がそう言い放つと、あちこちの物影から染み出すように複数の機人たちが姿を現した。
「どうしたエレファント。もめ事なら加勢するぞ」
「誰だそいつは。見ない顔だな」
「おおいみんな、武器を持ったよそ者がいるぞ」
黒崎の周囲を囲むように普段着の機人たちが次々と現れ、ハリィの目に怯えの色が浮かんだ。
「……くそっ、今日のところは見逃してやる。今度会ったら命はないぞ、機人」
ハリィは僕に向かって捨て台詞を吐くと、近くの機人をつき飛ばすようにして姿を消した。
「――あっ」
敵が消えた途端、その場にへたりこんだ『天使』に僕は思わず駆け寄った。
「大丈夫かい?」
安堵から失神したらしい『天使』の肩を僕が揺すると、どこからともなく「乱暴に起こすのはおよし、坊や」と女性の声が飛んできた。ふりかえると髪の黒い、強いまなざしを持った女性機人がすぐ近くで僕を見つめていた。
「あなたは?」
「そこにいる負傷兵の同居人さ。その子はあたしが保護者のところまで送り届けてやるよ」
女性がそう言うと、黒崎が眉を下げ「頼めるか、アマンダ」と言った。
「関わっちまったものはしょうがないだろう?あたしがこの子の面倒を見ている間、坊やから事情をよく聞いておくんだね」
アマンダと呼ばれた女性はそう言うと、近くに停めた車の所へ『天使』を連れて行った。
「助けていただいて、ありがとうございました」
僕が黒崎にあらためて礼を述べると、傷跡の残るチャンピオンは「なに、ルールもわきまえずに俺たちの縄張りに飛び込んでくる方が悪いのさ。……さて、助けた代わりにってわけじゃないが、話くらいは聞かせてもらえるんだろうな」
「ええ、、まあ……」
加勢に来た機人たちがぞろぞろと引き返してゆくのを眺めながら、僕は短く返した。
「俺は黒崎。この辺りじゃエレファント黒崎って呼ばれてる」
「知ってます。黒崎さん、さっきあなたの試合を拝見しました。お身体はもう大丈夫なんですか?」
僕が気遣うと、黒崎は「なんだい、観客だったのか」と苦笑いを浮かべた。
「あんなの大したことないさ。それよりちょっと俺の家に寄っていきな。お前さん、訳ありなんだろう?」
「そんなところです。……ちょっとトラブルを抱えてて、今はショウって人のところに身を寄せています」
「ショウか。立ち入り禁止区域の顔役だな」
「知ってるんですか?」
「流れ者の機人だってことしか知らないが、それなりに一目置かれてるやつだ。……もっとも深くかかわろうとは思わないがな」
「一応、ショウと連絡を取らせてください。あまり余計なことに首を突っ込むなと言われてるんです」
「ああ、好きにしな。それじゃあ俺は車を取ってくるよ」
黒崎はそう言い置くと、身体全体をやや左に傾けつつ去っていった。
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