チョコレート味の毒

 チョコレート味の毒を手に入れたと友人は言う。チョコレート味の毒?と聞き返すと彼女はそうと頷いた。

「死ぬときに苦しまないように子供も大好きなチョコレート味にしたんだ」

「でも、その、毒がチョコレートの味がするってどうやって分かったの?」

「さぁ?誰かに飲ませてチョコレートの味がするか聞いたんじゃない」

「誰に?」

「それは死刑囚とか」

「死刑囚が正直にどんな味がするか答えるの?」

「正直に答えたら解毒剤を飲ませるとか言ったんじゃない」

 甚だ疑問だ。しかし最大の疑問は何故彼女が持っているかだ。毒薬など危険なものを何故一学生が持っているのか。だが毒薬と言っても殺虫剤も毒薬に入り、農薬も組み合わせれば毒薬になる。そもそも彼女は本当にチョコレート味の毒薬を持っているのか。ともかくこの時にどの様に反応すべきが検討が付かず、あ、そうと答えた。そして私達二人は食堂に行った。


 食べ物を口に運ぶのを躊躇する時がしばしばあった。チョコレート味の毒。その味はどんな味なのか。いや、チョコレート味の毒ならチョコレート味なのだろう。私達が普通に口に入れるであろうチョコレートの味がするのだろう。もしそうならばチョコレートを食べたときにそれが毒だと分からず飲み込む可能性がある。私がもしそのチョコレート味の毒を飲み込んだら、入れたのは隣に座っている彼女しかいない。彼女が私を殺したがっているのか。いや、そもそも第一に、前に言ったとおり、彼女がそんな毒を持っているはずがない。それならなぜそんな話をした?ただの言葉遊びだったかもしれない。彼女は私を揶揄う為にそう言ったに違いない。しかし確証はない。彼女が本当にチョコレート味の毒を持っている可能性と同等に。彼女が別の味の毒を持っているのと同様に。

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