第12話 誕生日デート

「へぇ……凄いわね。 最近のプラネタリウムだと、宇宙の世界も体験できるのね」


「そうみたいですね。 後から体験してみます?」


「せっかくだし、体験してみようかしら」


 俺たちは駅に集合して、電車に揺られてプラネタリウムがある街へ訪れた。


 そこからプラネタリウムがある場所までバスで移動。


 バスが着いてプラネタリウムの中に入ると、丁度良いことに、投影開始時間まであと少しという感じだった。


「平日だから、やっぱり人少ないですね」


「そうね。 でも、その分広く見れるんじゃないからしら?」


「確かにそうかもしれないっすね」


 俺たちは受付でチケットを買って中へと入る。


 まだ辺りは暗くて、自分達の席を見つけるのに少し苦労してしまった。


「あったあった」


「なかなか良さそうな位置ね」


「確かにそうっすね。 いや〜楽しみだなぁ」


「ふふっ。 私も楽しみだよ」


 俺達は椅子に着いて話をしていると、館内放送が流れて、少し暗かった世界に数多の星が浮かんだ。


 俺たちはリラックスして星空を見る。


 隣をチラッと見てみると、雫さんの目はキラキラと輝いていたのだった。











 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


「ん〜! 良かったぁ! 天然の星空も良いけど、人工的な星空も一味違って良かったね」


「同じ星空でも、一味違うのは良いですね。 両方楽しめそうです」


「これはもう一度来たいな」


「良かったら、また一緒に来ませんか?」


「おっ。 いいねぇ、楽しみにしてるよ」


 俺たちはプラネタリウムを見て、宇宙の世界を体験した後、近くにあるファミレスへと来ていた。


 空は暗くなってきていて、人工的な光が徐々に強くなってきている。


 きっと、店を出た頃には真っ暗になっているんだろうな。


「雫さん。 このピザ美味しいですよ? 良かったら一切れ食べませんか?」


「いいのかい? なら、貰おうかな」


 俺はピザの一切れを持って雫さんへと渡そうとする。


 しかし、俺の手はガッと雫さんに掴まれて、動かすことができなくなってしまった。


「な、なんっすか??」


「……どうせなら、アーンして欲しい……かも。 ほら、私、誕生日だし?」


「ほ!?」


 俺は素っ頓狂な声を上げる。


 雫さんはそんな俺にお構いなしで、少し頬を赤くしながら口を開けた。


 幸いまだ周りの人達は俺達に気付いていない。


 これは……するなら今しかないな!


「あ、あーん……」


「……ん。 美味しっ!」


 雫さんの口にピザが運ばれる。


 雫さんは小さくて可愛らしい口でピザに齧り付き、リスのように頬を丸くしながら美味しそうに食べていた。


「ははっ。 美味しそうに食べますね」


「実際に美味しいからね」


「あははっ……」


「ふふふっ……」


「「……………」」


 俺たちは顔を真っ赤にしながら無言で食べる。


 した側もされた側も、これ、予想以上にはっずぃなぁ……!!


 俺はご飯を食べていたはずだけど、アーンした直後からよく味がわからなくなったのだった。

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