第11話 2人で誕生日に星を見に行きませんか?

「雫さん。 7月7日って空いてますか?」


「えっ? 空いてるけどどうしたの??」


 前期のテストまで後1か月を切った6月の下旬。


 俺は週一回の星空観測会にて、雫さんに声を掛けていた。


 望遠鏡から離れた雫さんは少し離れて、俺の方を見る。


 その顔には驚きと、少しの期待が込められているような気がした。


「7月7日って雫さんの誕生日の日じゃないですか。 だから、お祝いをしたいなって思って」


「そうなのね。 特に予定はないから大丈夫よ」


「なら、俺に雫さんの時間を下さい」


「……うん。 あげるわ」


 雫さんがボソッと言った後、場は静寂に包まれる。


 でも、気まずい感じはなくて、ちょっと照れくさい雰囲気が場に流れていた。


 雫さんの頬にキスしてから数日。


 俺はあのキスから、雫さんに対する思いを詰めていた箱にヒビが入り、雫さんへの気持ちが日に日に溢れ出ている。


 今では講義中にも雫さんのことを考えてしまい、講義に集中できないぐらいだ。


 そんな状況で、雫さんの誕生日は日に日に近づいてきている。


 そう考えると、告白するには絶好のタイミング、シチュエーションなのではないかと思った。


 そう思うと、俺の気持ちは止まらない。


 今回のデートで、絶対雫さんの心を射止めてみせる……!!


「ちょっと遠くにプラネタリウムがあるじゃないですか? 雫さんは行ったことあります?」


「ないわね。 興味はあるけど、なかなか時間が取れなくて」


 よっし。 興味ありそうだし、これなら誘っても良さそうだ。


「なら、プラネタリウムに行ってみましょうよ! 俺たち天文サークルに入ってますし、興味があるので!」


「それはいいわね」


「やった! なら、詳しいことはまた連絡しますね!」


「えぇ、お願い」


 俺は内心で雄叫びをあげながらガッツポーズをとる。


 やった! デートに誘えた! 


 しかも、雫さんの誕生日の日に! これは脈があるんじゃないか!?


 俺はウキウキしている心をなんとか表に出さないようにしながら、雫さんと一緒に夜空を見上げた。

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